北川美智子

2021 11 Feb

テキスタイルウォッチング・甘辛トーク 2021年2月

 激動の2020年が過ぎました。
 後世の歴史にいくつもの話題を残すであろうコロナの影響は私たちの生活そのものを変えようとしています。
 もの作りも販売も大きく変化し、市場もライフスタイルも今までにない取り組みが求められます。
 アパレルの展示会も素材展もデジタル化し消費者と店をつなぐ方法も変わり始めています。
 どのような変化が起こり対応が求められるのだろうかと試行錯誤するうちに秋が過ぎ冬と春の同居した店頭となりました。
 少々ご無沙汰しましたがそんな変化の時を見て感じるもの作りや素材について気の付いたことをお伝えしたいと思います。

 疲弊した市場風景といわれる中にもファッションやモードには見る人を楽しませる力があります。
 季節の変わり目をも不確かにしてしまうコロナ渦の社会現象ですが、逆に季節を大切にする心が生まれてきたりストレスからの解放や難題を解決するために知恵を絞る新たなライフサイクルやライフスタイルが生まれました。
 最初は戸惑いを見せていた店頭も従来とは異なるセールの在り方やSNSと連動したり変化した消費者のライフスタイルに沿うべく様々な対応と工夫が見られます。
 ファッションが持つ本来の役割が変化していくのは当然のことですが、それでも冬から春のウィンドウは私たちに楽しみや驚き、喜びや幸せ感を与えてくれることには変わりありません。
 楽しみながらも昨年と少し異なる店頭の推移をウォッチしていきたいと思います。

 最近のMDの方針として季節を春夏・秋冬(S/S・A/W)と分けて考えることから「冬から春」、「夏から秋」とみる向きが出てきました。
 理由は天候の不順(気候が定まらないこと)ライフスタイルの大きな変化(コロナ渦で生まれたリモートワークやオウチご飯などの新スタイル)、一般的には環境の整備で空調などによる快適さが得られるようになったことが挙げられます。
 このことが季節の変わり目を見えにくくし、気候のとらえ方に幅ができ、リアルな暑さ寒さへの対応を自由に行う結果を生み出したといえます。
 もちろん日本には四季があり、歳時があり、それに基づく情緒がはぐくまれることには変わりなく私たちが日本人の心を失うものでもありません。
 寒い春先のためには温かな素材や重ねの工夫がなされ春らしい色が付けられるのは当然のことでしょう。
 昨秋のホリデーを前にしたウィンドウを思い起こしながら次回に12月の店頭を見ていただきたいと思います。