武田 尚子

2022 20 Aug

ランジェリーも「ジェンダーフリー」

2年半ぶりのリアル開催となった「2022パリ国際ランジェリー展」は、継続するテーマが確実に次のフェーズに進んでいた。では、前回までは目につかなかった今回の目新しいテーマは何かと、今改めて考えると、それは「ジェンダーフリー」「ジェンダーレス」ではなかっただろうか。
体型の性差がベースにあるランジェリーの世界でも、世の中の多様化が進む中で、そういう時代がやってきたというわけだ。

まず、会場の入り口近くの製品トレンドフォーラムと併設されたワークショップに、ジェンダーフリーをテーマにしたメーキャップコーナー(ベーガンコスメブランド「No Beauty」によるもの)あったことが象徴的。

そして、これも今回の初めての試みとして、会場入り口近くにクラウドファンディングのエリア「ULULE(ウルル)」(クラウドファンディングの専門サイトとのコラボ)が設けられていたのだが、そこでテーブルを出して紹介しているブランドのデザイナーに話を聞いてみると、このような答えが返ってきた。
「“ボディポジティブ”、そして“ジェンダーフリー”をテーマに、デザインをしています」
「Avant Minuit Lingerie(アヴァン・ミニゥイット・ランジェリー)のアデレードさんは、ランジェリーの縫製やパターンの仕事を10年ほど経験してから、自分のブランドを立ち上げたという。


そのコレクションは、同「ウルル」エリアに出展していたブランドでは唯一、ファッションショーにも登場していた。

アウターウエアに限らずインナーウエアの世界でも、男物女物ともにユニセックス感覚のものは、長い間、定着している。
メンズのアンダーウエアにおいては、レースや透ける素材を使ったものなどは今に始まったものではないし、もっと時代をさかのぼると、かつて「アンドロジナス(両性具有)」のトレンドがあった。
ただ、昨今の「ジェンダーフリー」はこれまでの装いのためのユニセックス感覚とは本質的に異なり、もっと心身の深いところに根差したものであることは明らかである。まさに、選択の「多様性」は市民権を得てきている。