武田 尚子

2024 31 Jan

「分身」テーマにランジェリーショー

「パリ国際ランジェリー展」の会期中、パリの街中にあるサーカス劇場、 CIRQUE D’HIVER(「Merci」近く)で、フランスランジェリー協会によるランジェリーショー「ALTER EGO(オルターエゴ:もう一人の自分」が開催された。主催はPromincor(フランスランジェリー協会、フランスモード協会:DEFL)。
これは同産業と業界の発展を目指し、コルセットからスタートした歴史あるフランスのランジェリーのノウハウと創造性を伝えるもので、「ランジェリーモナムール」「ランジェリーロック」「レトロフューチャー」に続く4回目。前回2022年6月の「レトロフューチャー」から1年半が経っている。

参加したのは、ANTIGEL(アンティジェル), AUBADE(オーバドゥ), CHANTELLE(シャンテル), CHANTELLE X(シャンテルエックス), EMPREINTE(アンプライアント), LISE CHARMEL(リズシャルメル), LOU(ルー), LOUISA BRACQ(ルイザブラコ), MAISON LEJABY(メゾンレジャビー),SIMONE PÉRÈLE(シモーヌペレ―ル)の、フランスを代表する10ブランド(8社)。

フランスのランジェリーらしい「フェミニニティ(女性らしさ)」をベースにしながらも、毎回、コンテンポラリーなパフォーマンスが見られるが、今回は特にオリンピック開催にちなみ、新種目であるブレイキン(ブレイクダンス)の要素を取り入れた、次の世代を強く印象づけるものになっていた。なかなか静止画像では伝わらないが、全体的に非常に速いテンポのダンスパフォーマンスとなっていた。

全部で5つの章で構成されていたが、そのシナリオを以下のぞくと、今の世界の現実や私たちの内面にあるものが反映されている。
《1章》“疑い”(発散、 理解の欠如、 心の傷): 障害があると疑問が生じる。自己改善の始まりへ
《2章》“エスカレートする対立”(二元性、争い、怒り):自分自身との二面性、内なる戦い
《3章》“調停”(議論、妥協、理解):相互のギブアンドテイク
《4章》“和解”( 理解、共感、お詫び):旅は終わりを迎え、私たちは内なる平和を見つけた。再生の時が来た
《5章》“お祝い”(調和、団結、一緒に):私たちの違い、相違と矛盾を受け入れる。次のステップは慈悲深いステップになることの約束

(この写真のみ主催者提供、その他は武田撮影)

 

ダンサーたちが身に着けているランジェリーも、モノトーンからカラフルなものへと変わっていった。
ダンサーたちの質の高さはもちろんのこと、才能あるクリエイターたちがこのショーにかかわっていることは一目瞭然だが、クリエイティブディレクションや振り付けには、ヒップホップやストリート分野で活躍する若い世代がになっている。

あくまで次の時代を見据え、こういう表現ができるのは、フランス以外にはないのではないだろうか。


プレス資料にあった、次のメッセージが心を刺す。

フレンチランジェリーは、何世紀にもわたる女性のさまざまな進化と解放を記録することで、まさに時代を捉えています。
また、女性と自分自身との親密さ、他の人々と誘惑との関係も明らかにします。
達成可能、達成可能だと想像しているものを超えて自分の限界を押し上げる…自分自身を発見し、つながる。もう一人の自分と、自分の分身と和解する…それをこの45分間のダンスショーが提案します。
私たち全員が持っているこの強さは、一度も切れたことのないリンクや閉じられたループのように、再び自分自身を見つけることを可能にします
円を形成すること…統一性、全体性、啓発、そして最終的には生命と再生のサイクルの象徴です。
「Alter Ego」は、自分自身、自分の完璧さ、そして個人的な無限への進歩です。