武田 尚子

2017 19 Dec

KCIギャラリーで小さなコート展

 

京都服飾文化研究財団のKCIギャラリーで、収蔵品を紹介する小さな展覧会を拝見してきた。

「私と一緒に出かける? ―19世紀後半のコートとケープ―」。

 

1860年頃から1900年頃までの作品で、パリ・オートクチュールだけではなく、ボンマルシェなど百貨店で売られていた既製品のコート類、また着方を指南したファッション雑誌も展示してある。

広い階層が余暇を楽しみ、外出の機会が増えた時代背景と同時に、体にぴったりしたドレスとは異なり、サイズにはさほどとらわれない外側のアイテムであることも大衆化を加速させている。

 

まず目に入ってきたのは、オフホワイトの2作品。ジャガードのドレスの上に重ねたウォルト作のイブニングラップ(木ビーズ付きの絹糸フリンジのトリミングの付いた絹ファイユ)と、羽根の豪華なトリミングを施した絹ジャガードのイブニングラップ(生産国不詳)。

 

黒とベージュのカットベルベットに、絹糸、シュニール糸、絹糸を巻いたビーズのトリミングを施したフランス製のヴィジット(訪問用コート)は、現代にも通じるようなモダンな魅力。

 

衿元にボーンの飾りの付いた、ベージュのウール・ブロードクロスのケープ。菊柄の絹サテンの裏地が見える(イングリッシュ・ウエアハウス・パリ店)。どこかトレンチコートの原型のようなマニッシュな雰囲気が漂う。下に合わせたドレスは裾を引くほど長い。

 

底冷えのする京都、そのビルの一室で時空を超え、150年前のヨーロッパの衣裳たちと出会うことのできた豊かな時間だった。