武田 尚子

2022 18 Sep

コラボ企画で世界を広げる「サルート」

ワコールの中でも最古参ブランドとして根強いファンをもつのが「サルート」。
もともとは強い個性を求める専門店チャネルのブランドとして既に40年以上の歴史があるが、近年はワコールの一つの“顔”となる基幹ブランドの位置づけで、順調に業績を伸ばしている。
その「サルート」が、ここにきて意欲的なコラボレーションの展開を進めているのに注目したい。

この秋に発売される(展開期間:9月1日から12月末まで)のが、フランス革命を舞台にした池田理代子の名作、「ベルサイユのばら」とのコラボレーションによる限定企画だ。同作品も誕生から50年になるという。
「王妃マリー・アントワネットやオスカルの強い女性像に共感したことに加えて、象徴的なモチーフとしたバラをあしらっているなどの共通点がある」ことから実現。そのドラマチックな作品の世界感からインスピレーションを受けてデザインされたもので、双方のきらびやかで豪華なイメージがぴったりマッチした企画となっている。

また、衣裳協力として注目されるのが、熊川哲也氏が芸術監督を務めるK-BALLET COMPANYの新たなプロジェクト「K-BALLET Opto(オプト)」の旗揚げ公演で上演される作品の一つである『Petit Barroco(プティ・バロッコ)/小さな真珠(ゆがんだ真珠)』(2022年9月30日、10月1日にKAAT神奈川芸術劇場<ホール>にて上演)。
これは同プロジェクトの舞踊監督であり本作品の振付を担当する渡辺レイ氏から、「サルート」側にオファーがあったことから始まったという。
対象作品である『Petit Barroco/小さな真珠(ゆがんだ真珠)』は、「バロックとジェンダー」をテーマにしたもので、「バロック=ゆがんだ真珠」を“女性の解放された自己表現”に重ね、異性にとっての理想像から解き放たれた女性自身のかわいさや美しさを探るという実に興味深い内容となっている。

どちらというと好き嫌いのはっきりしたマニア性の高いブランドといえるが、マニア以外に広く解放させるためにも、こういう文化的なアプローチは非常に意義があると思う。