武田 尚子

2018 22 Dec

オーガニックコットンの幸せ

連載を行っている「もう一つの衣服」(ホームウエア)の取材で、オーガニックコットンの代表的な国内ブランドの話を伺う機会があった。

年明けの海外取材を前に、世界的にも差別化素材としてすっかり人気が定着しているオーガニックコットンの今を知りたいという思いもあったのだ。

 

まず、オーガニックコットンのパイオニアともいえるアバンティの「プリスティン」。9月末に同社代表取締役社長のバトンをわたされた奥森秀子さんにお会いし、これまでの変遷をいろいろ伺った。

同社がオーガニックコットン生地を扱うようになった1990年当初は、機能素材の一つというとらえ方をされたが、いくつかの震災やロハスブームなどを経て、人々の意識が時代と共に変化し、近年は加速度をつけて環境に対する意識や気持ちよさを求める欲求が高まっているという。

「気持ちよさ」には、肌から感じるものと、モノづくりの背景にあるものへの共感という2種類があるという話には深く納得した。

「何事も排他的になったら破綻すると思う。素材の機能面に限らず、毎日の生活がワクワク楽しくなるようなことにこれからもチャレンジしていきたい」と意欲を見せている。

 

次に伺った以下2ブランドは、いずれも2000年代中盤に誕生したブランドだ。

 

ファッションエディターである神田恵実さんのキャリアと実体験から生まれた「ナナデコール」は、オーガニックコットンの素材そのものが持つ治癒力に着目。

疲れて心身のバランスを崩している女性に対し、オーガニックコットンのパジャマを身に着けることによって、体をゆるめて眠ることの大切を伝え、口コミでファンを増やしている。

 

また、コレクションブランドのデザイナーとしてのキャリアの上に立つのが、可児ひろ海さんの「スキンアウエア」。オーガニックコットンに加え、染料についてもボタニカルダイを取り入れ、植物の持つメディカルな効能を伝えている。

この11月、オーガニックコットン原綿の産地であるインドで、モノづくりの場面や研究機関を視察し、自分に与えられた役割を痛感したと話してくれた。

 

オーガニックコットンはいわゆるマスになりうる素材ではないけれど、確実に時代を反映し、ある意味では象徴的な素材である。

「食」の分野とも非常に接点が多いのだが、「衣」(ファッション)ならではといえるのは、デザイン性、クリエイティブ性においても魅力的であることがその成長に欠かせないということ。それはこの3ブランドを見れば明らかだ。