武田 尚子
アーカイブ活かした「ルーピング」の魅力
「地球環境に配慮したサステナブルなものづくり」は、もはやメーカーにとっては必須の至上命題となっている。
そんな中、ワコールでは2030年に向けた環境目標の1つ「環境配慮型素材の使用比率を50%に」を達成していくものづくりの一環として、新商品「ルーピング」を発売した。
このブラジャーは、製造する過程で発生する工場屑や残糸をリサイクルした糸を商品の約60%に使用。将来的には製造した商品を回収して再資源化し、ブラジャーに生まれ変わらせる商品循環を目指している。
昨秋11月中旬に開かれた記者向け説明会の際にこの商品を初めて見たのだが、実は同社の2022春夏物全体をぐるりと紹介された中で、一番印象に残ったのがこの商品であった。
ワコールブランドの「ヒップケアガードル」「スハダワン」「ナチュレクチュール」「ユエ」、ウイングブランドの「マッチミーブラ」と、強化ブランドや新シリーズは数多くあるのだが、直営店ブランド「アンフィ」の中で展開されているこの「ルーピング」(ノンワイヤーブラジャーとボトム2アイテム)は非常に新鮮にうつった。会社の戦略は別にして、今、この感覚が求められているのではないか、個人的に“着てみたい”と思わせる魅力があったといったらいいか。
メリハリのあるシンプルな色の魅力(“自然界にある普遍的なエレメンツ”をカラーテーマにしたという6色展開)をはじめ、これまでの(最近の)ブラジャーにはあまりなかった軽さやすっきりしたスタイルが心地よかったのである。ブラジャーで税込3960円という価格も好感がもてる。
聞くと、このデザインや設計はワコールの過去の知見が活かされており、1972年に発売された「ビューティフォームブラ」や1981年に発売された「アンダーメッシュブラ」を現代女性の感性に合わせて再設計し、開発したのだという。さらに個人的な印象としては、1980年代に展開されていた「ここちℇ」などソフィ―グループを連想させるものがあった。
いずれも往年のヒット商品「グッドアップブラ」以前の、まだブラジャーのソフト化が進んでいた時代、ノンワイヤーブラも当たり前だった時代の記憶や記録である。それから約40年が経過し、改めてこの時代がまた巡ってきたのではないかと思うのである。80年代のファッションが今また新鮮に受け入れられていることの一環に、このブラジャーの登場が意味するものもあるように思う。
サステナブルのムーブメントによって、ともするとデザイン性や感触といった五感からくるものは隠れてしまいがちなのだが、こういうキラリと光る存在感は大事にしていきたいと願っている。
リサイクル糸使用率
機能性
サイズ展開(フレキシブルなサイズ展開で商品ロスを軽減)