武田 尚子

2018 07 Jul

マルジェラと靴下について

2回の定期的な海外取材(といってもパリ中心だが)も、何とか続けられていることに感謝。出張初日は、パリでしか体験できないことを意識し、近年は美術館の企画展巡りをすることにしている。アートにモードと、いつも何かしら興味を引く展覧会を開催しているので、話題に事欠かない。

 

今、パリではマルタン・マルジェラの展覧会が2つ開催されているが、エルメス時代の方は昨年、アントワープで見ているので、ガリエラ宮の方に行ってきた。

20年にわたるマルジェラの仕事を総括するような大規模なもので、その思想の深さ、かつ服としての美しさをじっくり堪能してきた。

それは温故知新そのもので、彼の革命性は、過去のモードの歴史をじっくり学び、壊しているように見せながらもしっかり反芻し、独自に新しく表現しようとする葛藤のようなものも伝わってきた。リサイクル素材も多く使われている。

その内容については、すでに多くのメディアでも紹介されているので、私は「靴下」に絞ったレポートを写真中心に試みることにする。

 

1989年春夏コレクションの中でも最初に展示されていたのが、マルジェラのアイコンともいえる足袋ブーツ。

独特のダーツをとったコットンのスカートやワンピースの下にはいているのは、足袋ブーツと、黒のシームの入ったストッキング。1940年代、第二次世界大戦の物のない時代に女性が手書きで線を入れたというあれである。

 

この8足のソックスでできたセーターには驚かされた(1991秋冬)。

 

ストッキングと服の一体化も。ベージュと黒のそれぞれプレーンストッキングを張り付けたような(2005春夏)

 

これは「日本の装甲」からイメージしたものとしている。渋谷辺りでよく見かけたようなスタイル?(2007秋冬)

 

このほかもタイツと靴との一体化は多くみられた。女性の脚や足に対しては格別の思いがあったのだろうか。もうすでにどなたかが論じていらっしゃるかもしれないが。