武田 尚子

2023 09 Mar

ナチュラルダイの動き

「地球にも肌にもやさしい」がランジェリー業界においては必須テーマであるが、それは繊維や素材にとどまらず、染料や染色にも及んでいる。
その典型例として「2023パリ国際ランジェリー展」で見られたのが、ナチュラルダイだ。つまり化学染料を使わずに、草や花など自然界にある天然のものから抽出した色素を使った染色を指す。

「Natura Feel」(右はterre de sienne、左はsable rose)

フランスはパリの郊外で、1年ほど前にブランドをスタートしたという「Natura Feel(ナチュラフィール)」は、ナチュラルダイによるコットン100%のランジェリーブランドだ。
コロナを契機に、自分自身の健康や生活を見直したというステファニーさんがスタートさせたもので、ナチュラルダイの複数のレシピを開発している。それはまさに「クラフトとインダストリーの間」(ステファニーさん)を模索する工程といえる。植物によって産地はさまざま

 

日本から初出展したシルク100%の「PUNTOE(プントゥ)」は、シルクでも特にナチュラルダイを特長にしたブランド「Nuara(ニュアラ)」を展開している。
デザイナーの松本奈月さんはもともと大学で染色を学んだ経験を活かし、瀬戸内海の小さな島で染色専門のアトリエを作った。ここでプライベートな島日記を配信しているが、ゆくゆくは「染色を体験する宿も運営していきたい」と話している。

「Nuara」のディスプレイ。ハンガー上の透明の筒の中にはその製品の染色に使った植物が入っている


いずれにしても、ナチュラルダイの背景には単なるモノではない、人間の営みやライフスタイルが見えるのである。