武田 尚子
まだまだポテンシャルがあるスポーツ
ランジェリーの世界的な動向の中で、「スポーツ」は既に確固たるポジションを形成しているように、国内のインナーメーカーもスポーツへの取り組みは減速することがない。
イノベーションとテクノロジーが反映される分野でもあるし、スポーツシックというファッションのトレンドも追い風になっている。
背景にあるのは、ヨガをはじめとするスポーツ人口の広がりだ。
私のようにもともと運動が苦手であったタイプでも、スポーツジム加入歴は20代から連続35年以上になるし、現在のメインであるヨガは既に始めてから10年経ち、生活の中でも欠かせないものになった(決して激しい運動はしない主義で、ヨガもリラックス系が中心だが)。運動の苦手な人の方が、向上心も達成感のような欲も全くないので(健康のために)継続できるという傾向もあるような気がする。
ユーザーとしての実感も含めて、インナーウエア側からアプロ―チするスポーツ市場の可能性としては、大きく二つの方向性があると思う。
一つは、機能性を軸にしたスポーツブラ(インナーでもアウターでもある)の深耕。
これこそ、ファンデーションの物作りの強みを活かしたもので、他業種ではマネのできない商品開発力があるはず。
そしてもう一つは、ライフスタイルへの広がりで、人々の普段の衣習慣までも変える可能性がある。一時よく言われていた「アスレジャー」がまさにそれ。ラウンジウエアやリゾートウエアとの中間領域でもある。
国内インナーメーカーもこの秋冬シーズンの新製品がそろそろ出そろう。
グンゼでは、若い層を対象にした「トゥシェ」ブランドで、ヨガウエアを発売。ハーフトップ(モールドカップ内蔵タイプ、ピーナッツパッドタイプ)とレギンスを中心に、トレンド柄を取り入れたデザインや、吸汗速乾素材を使用している。
トリンプ・インターナショナル・ジャパン「トライアクション・バイトリンプ」のスポーツブラは当初から引き続き、ハードサポートタイプとソフトサポートタイプの2タイプで対応。
今シーズンは目を引くプリント柄や色が加わっている他、レーザーバックやバッククロス、フロントジッパーや着脱しやすいフックなどの工夫も見られる。
コーディネイトのボトムも充実してきた。
ワコール「CW-X」は、「スポーツをする時はスポーツブラを」という啓発運動を展開。2019秋冬物展示会では、ヨガに向けた新デザインをはじめ、多様なスポーツに対応するデザインバリエーションが見られた。
機能性とデザイン性の両面から、まだまだ可能性をはらんだ市場になっている。