武田 尚子

2020 08 Oct

マスクに込めたオリジナル素材の訴求

ウィズコロナの長期化と共に、マスクがすっかり定番アイテムになっている。
百貨店が複数のファッションブランドと提携して展示販売を行うという動きも目につく。
蒸し暑い季節が過ぎ、秋冬シーズンの到来と共に、再び注目されているマスク。Tシャツやバッグにも共通するメッセージ性、シンボル性をはらんだものとして、今後の可能性が期待できるのではないだろうか。

海外では、ルイヴィトンが医療従事者のために医療防護用マスクやガウンの製作を行って寄付したというように、企業の社会貢献としての取り組みが伝わってくるが、ファッションとしての提案は一部の突出したラグジュアリーブランド以外は海外ではあまり多くは見られない。
ランジェリー業界では、パリの百貨店の売場などではマスクを求める声が少なくないにもかかわらず、実際に商品として販売しているところはほとんどないと聞く。
稀な例として、フランスブランド「リヴィ(LIVY)」で発売したモノグラム入りのマスクなどは、48ユーロという価格でもすぐ売り切れになってしまったとのことだ。

どちらかというとマスクにあまりポジティブなイメージのない海外に対し、もともとマスクに馴染みのある日本では、社内ミシンでの手作りという規模を含めて、多くのメーカーが取り組んでいる。
中でも、肌に直接つけるものということで、インナーウエアメーカーのものには安心感がある。縫製工場と直結したところを中心に、マスクの商品としての展開が定着しつつある。
その多くがオリジナル素材のメリットを活かしたもので、天然素材のやさしさ、あるいは吸湿速乾などの機能性が、マスクというアイテムに凝縮されているというわけだ。
ひもや内側など、ディテールにも細やかな心配りがされているのも、日本らしいといえるだろう。
いつも愛用しているインナーウエアのブランドからマスクを選ぶだけではなく、まずマスクでその肌ざわりの良さや使いごこちを体験することによって、肌着やブラジャーの購入に進むという人も増えるかもしれない。
さらに最近では、楽しいプリントやフェミニンなレースづかいのものなど、デザイン性も豊かに広がり、装いとのコーディネイトで使い分けられるようになっている。以下、代表的なものを。

 


「ウンナナクール」(ワコール)ではノンワイヤーブラ「BRAGENIC(ブラジェニック)」と同柄のプリントマスクが人気。9月28日から先行予約が始まった第二弾は、ビジュアルアーティスト・タカコノエル氏とのコラボレーションによる色鮮やかなプリントで、WEB限定デザインを加えた全4色で展開する。元気になるマスクを、ブラとおそろいで(10月23日から店頭やWEBで発売)

 


ランジェリーに使われているのと同じレースを使ったフェミニンなマスクを発売したのは「アモスタイル」(トリンプ・インターナショナル・ジャパン)。ピンク×白の他、ブラックも(肌側はいずれもベージュ)。ひもはアジャスター付きで長さが調節できる

 


敏感肌の人にも人気があるスマイルコットンの素材を使用した「フリープ」(島崎)のマスク。表側はベア天竺、肌に当たる内側はシルク100%となっている。3色、3サイズ展開

 


イタリアのフィロスコッチア綿を使った肌着ブランド「アロマティック」(タカギ)。マスクは長崎の縫製工場から出る残布を利用している(ストレッチ素材にシルケット加工)。フランス製リバーレースを全体に使ったタイプは、同ブランドの公式オンラインストア限定商品で、9日から公式HPで予約開始