武田 尚子

2019 12 Feb

着用習慣の「シフトチェンジ」

ブラジャーの市況の厳しさに対し、ナイトウエア・ラウンジウエア市場は順調という図式が、「パリ国際ランジェリー展」を取材していて浮かび上がった。それはパリやロンドンで市場視察をしていても感じたことだ。

消費者の志向が、実用重視、機能性重視で現実的、合理的になっている一方、ライフスタイルの変化の中で新しい衣服の習慣というものが生まれている。

 

上質な素材使いの肌着やナイトウエアのプレミアムブラントである「HANRO(ハンロ)」は、昨年も全世界で前年対比6%増と、引き続き右肩上がりの好調を維持している。

世界主要都市の一番店を中心にした強固な販売ネットワークを軸に、店舗ごとのシェアを深めていくという戦略が功を奏しているようだ。

 

HANROらしいベーシックなラインも安定しているが、特に好調といえるのがファッション性やシーズン性の強いナイトウエア・ラウンジウエア。着用シーンを限定せずに、幅広い着方のできるものが伸びているという。ここ数年の間に、同ブランドの商品構成も従来の伝統的なものからモダンなものへと、だいぶ変化している。その背景にあるのは、消費者意識の変化だ。

 

「外で忙しく働く女性は、家に帰ると快適にくつろいだ時間を過ごしたい。そういう思いを反映して、モダンコンフォートとでもいうべき、軽くてイージーなスタイルへとシフトチェンジが進んでいる。レディスに比べると、メンズはまだクラシックな要素が強いが、それでも上下別々の単品組み合わせを上手に着まわし、アウターウエアにも使いまわすようになってきている。自由なインビトウィーン(中間領域)というわけだ」

経営手腕が冴える同社のシュテファン・フォーマン社長(写真)は、変化をこうとらえる。

 

最近、日本でいうところの還暦(!)を迎えたというホーマン社長。

「世界の人々と交流できるこの仕事に巡り合って幸せ。これはまさに《運命》だったと思う」と話してくださった。

ネット全盛の時代の中で、この人間味こそが同ブランドの魅力である。