進士 恵理子
アートカレッジの学術交流シンポジウム GREEN DESIGN 7.0 Material Cycles

今年で7回目を数えるweissensee academy of art berlin主催のシンポジウムGREEN DESIGN。今年のテーマは「循環する素材(Material Cycles)」。使い捨てが前提の消費社会に立ち向かうエコロジカルデザインに焦点を当てる。
革新的なコンセプト、実用化への開発、そして社会的経済的に有効な持続可能で環境負担を考慮したプロダクトに携わっている18組からなるデザイナー、技術者、研究者、実践者それぞれが、それぞれの立場で活動を紹介する。
主催するweissensee academy of art berlinのgreenlab - Laboratory for Sustainable Design Strategiesでは多くのエコロジカルデザインをコンセプトにしたプロダクトとサービスを生み出している。これらのデザインプロジェクトは既存の社会では解決できていない大小様々な問題を解決するアイディアとして発展している。それは高齢者・移民・障害を持つ人・過疎化した地域・産業廃棄物など - 一見「ものをつくる」という意味における「デザイン」には関係がないように思われる領域 - にデザインの可能性を持ってアプローチしている。ものづくりから「ことを設計する」そんなデザインがこのエコロジカルデザインの領域には求められているのではないか、そう筆者は考える。
このweissensee academy of art berlinは私が2007年から約10年在籍してきたアートアカデミーだ。このGREEN DESIGN SYMPOSIUMの第一回が開催された時からずっとこのテーマに携わり多くのプロジェクト、素晴らしい講演を聞いてきた。自分のデザインもどこか「もの」づくりと「こと」づくりが交わるところにあると思う。新しいサービス、新しいプロダクトが新しいソリューションを生むと信じている。それらは決定的な唯一の手段で、且つものすごく影響力のあるものでなくてもいいと思う。むしろ周辺にたくさん発生して関わりながら成長するような小さなもの、身近なアクションでいいのだと思う。それがエコロジカルデザイン的アプローチの在り方だと思う。つまり試行錯誤の「こと」の積み重ねで正しい方法が導かれるような。たくさんの人の色々なアイディアが相互作用の中で実用可能になっていくような。その装置(枠組み=ハード)を考えることもエコロジカルデザインだと思うし、その一つ一つの中身(実践的なアイディアやアプリケーション=ソフト)に携わることも同じくエコロジカルデザインの活動だと思う。
デザイナーとは今や必ずしも車や服、インテリアなどの工業製品に携わるものではないということは明確になってきている。このことを忘れず恐れず自分のデザイン領域を模索していくためのナレッジを共有する、それがこのシンポジウムの意味ではなかろうか。