進士 恵理子

2020 29 Apr

子育て支援に1000€を!署名開始@Berlin

ベルリンでもCovid19の感染予防で幼稚園(1歳児から就学児童まで)が3月17日(火)から続いている。唐突に告知された金曜日の接触制限のお触れに、ベルリンの家庭中でリモートワークと家庭保育が開始されたわけだ。その数日後に幼児が遊べる公園も全て殺人事件があったかのようなビニールテープが張り巡らされ立ち入り禁止に。家庭では、子供たちを中心に生活が繰り広げられていく。しかし仕事はしなくてはならない。母親はとくに家事全般をこなさなくてはいけない立場にありがちであるため、すでに限界、と嘆く声も聞こえてくる。

そんな中、イースター休暇が開けた4月15日のプレスコンファレンスでは、多くの家庭でメルケル首相が幼稚園休園の措置を今後どうしていくのか、期待を胸に耳をそばだてていた保護者は多いはずだった。筆者もその一人であった。そころが、メルケル首相の口からは小売業の休業の緩和をメインにした内容で、正直がっかりしたものだ。そしてなぜ、これだけの世帯で仕事も育児も家に持ち込まざるを得ない家庭の苦労を政治が理解しようとしていないのか、価値が与えられていないもののように扱われていることが不思議であった。

肩透かしを食らった会見後登場したのが、「1000€のKindergeld(子供手当)を家族に」という署名運動である。発起人はKatharina Mahrtさん、3歳の息子を持つワーキングマザーだ。

Katharinaはベルリン・ノイケルン在住フェミニスト。tweeter @KathaMars

44262の署名を集めたこの活動(https://www.change.org/p/eltern-in-der-coronakrise-nicht-im-stich-lassen-1000-euro-f%C3%BCr-familien)は目標の50000に達する勢いだ。

何より納得いく説明で人を惹きつけた彼女の問いかけは、メルケル首相が託児施設の緩和の有無に一切触れなかったことだけでなく、この措置が60代以上の白人男性(#leopoldinaという研究機関)たち"だけ"によって決定されたことが指摘されている。小さな子供の育児がどのようなものなのか想像もできない人物たちによって無視されている重要な市民生活の負担を、無関心への警告を高らかに叫んだのであった。

翌月曜日の4月20日からシングルマザー家庭の園児の保育が再開されたり(それまではシステムに不可欠な職業の家庭だけ)いいニュースは聞くことができ始めている状況だが、依然、再開のめどは立っていない。夏期休暇後8月からだという説が強い。

実際のところ、子供にとっても、親が構ってくれない、友達に会えないということはストレスである。エスカレートし事態が深刻化しているケースもあるという。

授業はオンラインでできる。しかし保育はできない。保育は仕事をする保護者に変わって面倒を見ているだけなわけではない。集団行動やさまざまな子供の素質や能力を引き出す場所である。幼児期がいかにその後の人生に影響するかは多くの専門家が指摘しているところだ。このまま放置されているわけにはいかないと思う。