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2021 17 Sep

「メット・ガラ」コロナ後初の開催 セレブのドレスはヌーディーがトレンドに

©CHANEL

写真左より:リリー・ローズ・デップ、ウィットニー・ピーク、マーガレット・クアリー、クリステン・スチュワート、エマ・ラドゥカヌ(「シャネル」のアイテムを着用)

 

 ニューヨークにあるメトロポリタン美術館では、2021年9月13日にファッションのオスカー賞とも称されるメット・ガラが開催された。

 これはメトロポリタン美術館服飾研究所による展覧会「In America: A Lexicon of Fashion」(アメリカで:ファッションの語彙集)の開催を祝して行われる、服飾研究所のための資金集めのパーティだ。本来は2020年5月に開催される予定だった展覧会が、パンデミックのために延期されて、2021年の9月となった。

 アメリカのファッションに焦点をあてた同展覧会は二部制になっていて、まず第一部の「「In America: A Lexicon of Fashion」展が2021年9月18日から、22年9月5日まで展示される。その後「In America: An Anthology of Fashion」(アメリカで:ファッションの作品集)が2022年5月5日から開催され、22年9月5日まで展示される予定だ。

 「イン・アメリカ:ア・レキシコン・オブ・ファッション」展では、1940年代から現在に至るまでの約100着におよぶメンズ、レディスの服が展示されている。展示物はす12のセクションに分けられていて、それぞれ「ノスタルジア」「ジョイ」「ストレングス」「デザイア」「コンフィデンス」といったアメリカンファッションのエモーショナルな質をあらわす言葉ごとに分類されている。

 レキシコン、すなわち語彙集というのは聞きなれない言葉だが、展示を見れば、意味がわかる。ケースに収められた一体ずつのファッションには、その服が放つ言葉が添えられているのだ。たとえば「意識」のセクションに展示された、1920年代のドレスをアップサイクルしたイミテーション・オブ・クライストの服には「救済」、あるいはデッドストックの生地を生かしたコリーナ・ストラーダの服には「感謝」という言葉が添えられている。

 今回のメット・ガラでは、ガラの議長であるヴォーグ誌編集長のアナ・ウィンターに加えて、共同議長として大阪なおみ、ティモシー・シャラメ、ビリー・アイリッシュ、アマンダ・ゴーマンという各界を牽引する若手が就任。おかげでゲストたちも、若手のヒップホップアーティストたちやスポーツ界の選手たちが多く参加したのも特徴だ。

 メット・ガラはどのイベントよりも、奇抜なファッションを楽しめるレッドカーペットだといえる。オスカー受賞式では、女優たちは美しく見せるのが目的であり、悪目立ちするファッションでは、ワーストドレッサーになりかねない。一方、メット・ガラは、ファッションの常識を打ち破る、冒険的な装いが賞賛される。

 今回は全身を真っ黒な布で包んで登場したキム・カーダシアンや、金色の鎧に身を包んだリル・ナズXはレッドカーペットの注目を浴びた。またモデルのイマンは巨大な羽根飾りの衣装で登場して、周囲をあっといわせたが、これはジェンダーフルイド(性差流動性)な表現で知られるデザイナー、「ハリス・リード(HARRIS REED)」のもの。「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」がイマンとハリス・リード二人が着用した衣装の製作をサポートした。

©DOLCE&GABBANA

写真:「ドルチェ&ガッバーナxハリス・リード」のアイテムを纏うモデルのイマン

 歌手のグライムズが着用したのは、シリコンを使ったボディがドラマチックな「イリス・ヴァン・ヘルぺン(Iris Van Herpen)」のドレスで、さらに剣と本を抱えた姿で異次元感を生み出していたし、「プラダ(PRADA)」をまとったハンター・シェイファーもSF映画から飛びだしてきたようだ。

©Iris Van Herpen

写真:歌手のグライムズ(「イリス・ヴァン・ヘルぺン」のドレスを着用)

©PRADA

写真:ハンター・シェイファー(「プラダ」のドレスを着用)

 

 社会的にもっとも話題を呼んだのは、下院議員のオレキサンドリア・オカシオ-コルテスだろう。前から見れば、エレガントなオフショルダーのドレスだが、背中には「Tax the Rich」(富裕層に税金を)というスローガンを縫いつけてあって、全米で論議を呼んだ。

 また大統領就任式で、たちまちイットガールの座を射止めたカマラ・ハリス副大統領の娘にあたるエラ・エムホフは、「ステラ マッカートニー(Stella McCartney)」のカスタムピースで登場した。

©Stella McCartney

写真:左 エラ・エムホフ(「アディダス バイ ステラ マッカートニー」のスペシャルカスタムを着用)、右 ジュリア・ガーナー(「ステラ マッカートニー」のドレスを着用)

 

 アメリカンファッションのコードを守ったのは、ミュージシャンのファレルとヘレンのカップルで、「シャネル(CHANEL)のカウボーイルックをまとってみせた。またアメリカ人デザイナーである「トム ブラウン(THOM BROWNE)」を選ぶセレブも多く、ラッパーのリル・ウージー・ヴァートと、ミュージシャンのエリカ・バドゥは共に、「トム ブラウン」の服で身を包んで、異色のいでたちを見せた。

©CHANEL

写真:ミュージシャンのファレル・ウィリアムスとヘレン・ウィリアムス(「シャネル」のカーボーイルックで登場)

 

©THOM BROWNE

写真:ラッパーのリル・ウージー・ヴァート(「トム ブラウン」のコートとスカートを着用)

©THOM BROWNE

写真:ミュージシャンのエリカ・バドゥ(「トム ブラウン」のダウンストールとスカートを着用)

 

 長いトレーンを引くようなドラマチックな装いもメット・ガラの真骨頂だ。体操選手のシモーヌ・バイルズはスワロフスキーのクリスタルをちりばめた、なんと45キロもあるトレーンを引いたドレスを着用。一方、歌手のロザリアは「リック・オウエンス(Rick Owens)」によるドラマチックなトレーンを引いたドレスで登場した。

©Rick Owens

写真:歌手のロザリア(「リック・オウエンス」のドレスを着用)

 

 今季のトレンドとしては、ヌーディな装いが多かったことが挙げられる。透ける素材で、ほぼ裸体が丸見えになるようなドレスがいくつも登場して、ケンダール・ジェナ−、ゾーイ・クラヴィッツ、オリヴィア・ロドリゴ、イリーナ・シェイクらが大胆な姿を披露した。またリリー・デップのようにブラトップやミッドリフを見せるスタイルも、人気だ。

 Kポップの人気アイドル、ロゼや、ヘイリー・ビーバーは「サンローラン(SAINT LAURENT)」によるシンプルなドレスで、ジジ・ハディッドも「プラダ」のシンプルなドレスで、それぞれエレガントに装ってみせた。

©SAINT LAURENT

写真左:BLACKPINKのロゼ(「サンローラン」のドレスを着用)

©SAINT LAURENT

写真:ヘイリー・ビーバー(「サンローラン」のドレスを着用)

©PRADA

写真:ジジ・ハディッド(「プラダ」のドレスを着用)

 

 昨年の同時期は、五番街にも人がいなくなっていたニューヨークを考えると、1年5ヶ月後にこうして大きな祭典が開催された回復力は驚くほどで、ファッションの復興も感じられるイベントとなった。

取材・文:黒部エリ