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「アズマ」が映画「青い春」をテーマに2021秋冬コレクションを発表
「アズマ(Azuma.)」が2021年2月22日、2021秋冬コレクションを東京・港区にある東京タワーの麓に位置するスター ライズ タワー(STAR RISE TOWER)にて発表した。新型コロナウイルス感染症対策の観点から、会場への入場規制のもと開催された。
「今、ファッションに限らず思想も十人一色になっていると感じます。自身で思い、考え、悩み、選ぶことをしなくていいと本気で思っている人ばかりです」と、移り行く時代に懐疑的な視線を投げかけるのは「アズマ」のデザイナー、東研伍だ。
今季のテーマである”IF YOU ARE HAPPY,CLAP YOUR HANDS“のインスピレーション源となったのは豊田利晃監督作品の映画「青い春」。同作品は松本大洋原作の漫画の実写化であり、閉塞的で退屈な日常における登場人物たちの「青春」の使い方に、当時15歳だった東は魅了されたという。変化というものは大抵緩やかに起こるが、映画の公開から約19年経った現在でも変わらずに彼の根源であり続けた「劣等生への肯定」という、映画で描かれていた漠然とした心象風景を、服作りやショー演出を通して実現していく作業だったと東は語る。
壁一面に貼られたビニールシートの全面にスプレー缶の落書きがされた会場内にはどこか懐かしいシンナーの香りが漂う。前季のショーはブランド初だったこともあり消費者視点のクリエーションに尽くしたというが、その甲斐あってか新規卸先の獲得やブランドの認知度向上など、確かな手応えはあった。観客を入れる本格的なショー形式を取ったのは今回が2度目となる。東はむしろ前季の好調な流れに逆行するかのように「青い春」という自分自身のルーツを辿り、劇中キャラクター青木の生き様のように自分に正直な服作りを模索した。
クリエーションにおいて東は「普通にかっこいいと思うものを普通に作った。これはずっと昔から言ってきたことで、2021春夏シーズンではやらなかったことです」と語ったが、映画でのひねくれ者、あぶれ者、ロクでなしといった退廃的なイメージをファッションの要素に内包し、かっこいいものとして昇華するには確かなセンスとバランス感覚を必要とする。中でも映画のラストシーンで屋上の柵の外に立ち、手をたたいた回数を競う「ベランダゲーム」の犠牲となる青木を、慈悲深く描いた場面をイメージした広幅のジャガードは思い入れのあるピースの一つだという。
ショーの終わりには「青い春」で花田先生役を演じた、俳優やマジシャンなどマルチに活躍するマメ山田本人が特別に登場した。その他のモデルには東京・渋谷発のバンドであるALIEN LIBERTY INTERNATIONALのメンバーを起用するなど、充実のキャスティングも見どころの一つであった。