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「ブルネロ・クチネリ」のカシミヤニットへの思い「NEVERENDING STORIES」
「ブルネロ クチネリ(Brunello Cucinelli)」は同ブランドのシンボル的存在でもあるカシミヤニットへの思いを込めて、カシミヤあるいはカシミヤが混紡されて編みこまれたセーターを「NEVERENDING STORIES(永遠に続く物語)」と名付けることを発表した。2021年より、店頭にて「NEVERENDING STORIES」のVMDやラッピングとともにカスタマーへその思いを伝えしていく方針だ。
「ブルネロ クチネリ」のブランド哲学は当初より、古典文学の傑作からのインスピレーションとクリエイティビティや伝統との最適なバランスを踏まえた品質への追求を合わせ持ち、古代哲学者から引用する価値や理想は、トレンドやシーズンを超えてコレクションに反映されてきた。それがアイコニックかつクラシカルであると同時にナチュラルで洗練された独特のスタイルとなった。
同ブランドが1978年のファーストコレクションから着目してきたのが、良質で変わらぬ魅力を持つ高級カシミヤだ。柔らかく、暖かく、心地良いカシミヤニットは、手をかけ大切に代々受け継がれ、その人や家族の物語を具現化する。ピュアなカシミヤも、貴重なシルクや最高級のウールといったほかの天然素材を混紡したカシミヤも、シーズンを超えて常に新しいクリエイションや現代のスタイルに調和しつつ、どのコレクションにもクラシックでアイコニックな要素を加える価値を与えてきた。
そんな同ブランドゆかりの繊維であるカシミヤに対して、あらためて意識して向き合い、ブルネロ・クチネリが愛してやまない偉人の言葉や偉大な書物のように、永遠に語り継がれ、手にした人々の人生を具象化する物語(Neverending Story)に重ねた。
この思いは11月に発表された、ブルネロ・クチネリが森羅万象との“社会契約”についてつづった手紙にも伏線がある。クチネリはパンデミック・ウィルスが引き起こしている現状を、「森羅万象自身が私たちへ助けを求めている、ということ」であり、「この重要で急を要する要求に応えることは、私たち人間に与えられた倫理的使命」で「それはある種、森羅万象との新たな社会契約のようなものだ」と考え、「明日への最たる希望である私たちの子供たち、そして未来の世代を見つめ、今よりは若干改善された世界を彼らに残すことを考えましょう。哲学者が教えるように、過去の遺産なくして将来はないということを改めて認識しましょう」「愛するゆえの恐怖で新しい世代を想い、 森羅万象との新たな社会契約を思い描いています。それはなぜかというと、今日の人間の子供たちが地球という惑星での本来の暮らしに戻って欲しいと願うからです。そこでは、動物、植物、水が、自然の掟に従って、再生する時間と場所を見つけ、人類の歴史の中で何千年もの時を刻んできた広大で穏やかなリズムが保たれ続けているというのが理想です。そして森林が大地を再び取り戻す時間と場所を見つけ、砂漠をなくし、酸素と涼やかな風で地球を蘇生させることができれば、というのが私の願いです」(一部抜粋)と語っている。
そしてそんな思いは、カシミヤを通じて紡がれたモンゴル・中国の人々との交流に想起され、彼が常に抱いている中国やモンゴルの人々、貴重なカシミヤの束への感謝の念へとつながる。クチネリは「カシミヤという素材は森羅万象の美しさの象徴であり、私にとっては民族間の兄弟愛の象徴でもある」と語っている。
文:田中美貴