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2020 23 Jul

「ディオール」マリア・グラッツィアゆかりの地である伊プーリアで無観客ショーを開催 サヴォワールフェールへの限りなきオマージュ

© Teresa Cioca

 

 「ディオール(DIOR)」は2020年7月22日、南イタリアのプーリア州レッチェのドゥオモ広場にて、2021年クルーズコレクションの無観客ショーを開催した。

 

 アースティック ディレクターのマリア・グラツィア・キウリにとって、レッチェは父の故郷であり、自身もこの地で娘を出産し、しばしばバカンスを過ごすというゆかりの深い地だ。エレガントなバロック建築の美しい街として知られ、独特の伝統工芸が息づく街でもある。

 同コレクションは、そんなこの地のヘリテージからインスピレーションを得て、その職人技をふんだんに活かして作成されており、全体的に温かい牧歌的な雰囲気が漂う。例えば、伝統工芸や文化を守り地域の発展に貢献する地元財団「レ・コスタンティーネ財団」のアトリエの協力による独特の繊細な機織りのファブリックを使用。これはメゾンを象徴する「バー」ジャケットをはじめとした一連のジャケットや、エプロンドレスやロングスカート、ワイドパンツなどリラックスした雰囲気のピースを実現した。スカートには“Amando e Cantando(愛すること、歌うこと)”という同アトリエのモットーをあしらっている。また今や実現できる職人がほとんどいないという、15世紀からの歴史を持つトンボロという独特のレース刺繍によって、花や蝶のデコレーションがなされたアイテム達も印象的だ。

 

 さらにマリア・グラツィアと親交の深いアーティスト、ピエトロ・ルッフォとの協働で、ムッシュ ディオールが1949年に発表したフラワーエンブロイダリーのミス ディオール ドレスに共鳴した夏の風景を想起させる小麦の穂が一面に広がる野原をイメージしたディテールも登場。これまで使用してきた花や植物のモチーフとは違う独特な自然の雰囲気が、軽やかなコットン ロングドレスやシャツ、ショートパンツを飾る。

 マリア・グラツィアは舞台演出でもプーリアの伝統にとことんこだわり、会場となったドゥオモ広場をアーティスト、マネッラ・セナトーレによるルミナリエ(イルミネーション)で飾った。イタリアでルミナリエは守護聖人の祝祭の際などに設置されるが、プーリアはその発祥の地として知られている。さらに、「ラ・ノッテ・デラ・タランタ財団」によるプーリアの民族舞踊、タランテッラというダンスがランウェイで繰り広げられた。

 

 「ディオール」のサヴォワールフェールの精神を、自身にゆかりのあるプーリアの地で再現。それを服飾文化だけでなく、アート、音楽、舞踏・・・と、すべてを包含して演出したこの発表は、単なる“ファッションショー”の域を超えた崇高なメッセージを放った。

 

文:田中美貴

画像:ディオール

 

「ディオール」2021クルーズコレクション

「ディオール」公式YouTube「マリア・グラッツィア・キウリ インタビュー動画