繊維ニュース 編集部ブログ

2018 31 May

播州織産地博覧会

 【大阪本社】5月27日(日)に、播州織産地の中心地、兵庫県西脇市の旧市街で開かれた「播州織産地博覧会(播博=ばんぱく)」に取材を兼ねて行ってきた。国内最大の先染め織物産地ながら、産地で作られた生地をそのお膝元で買えるチャンスがあまりにも少ないということで、地元の綿布商など市民有志が語らって実行委員会を立ち上げ、開催にこぎ着けた初めての生地即売会だ。

 西脇市や多可町で「播州織」の生地を取り扱う11社が出展した、各出展者は、これまでに著名ブランド向けに試織提案した、珍しい組織で織られたり、手の込んだ加工が施されたりした、普段は市場に出回らない珍しい生地を店頭に並べた。地元西脇高校の生活情報科の生徒や、神戸芸術工科大学の学生によるワークショップも開かれた。

 来客は、午前10時から午後3時まで5時間の開催で約5千人と、主催者も驚きを隠せない大盛況。筆者が9時ごろに到着すると、既に三つ用意したという駐車場はほぼ満車。今はシャッター通りとなってしまったかつての商店街に10時の開始前から人だかりができていた。大々的な事前の宣伝はしておらず、基本的にSNSと口コミが中心というから、コンテンツとしての集客力はなかなかのもののようだ。駐車場に止められた車には他府県ナンバーも多く見られた。

 会場となった市内中心部の商店街の近くには、昭和初期には織物工場で働いた女工たちの共同宿舎だったという、我が国最古の木造アーケード建築「旭マーケット」も残る。そんなかつての繁華街が、イベント開催で、束の間、往時のにぎわいを取り戻したかのようだった。

 ただし、県道を封鎖して開催できるわけもなく、主催者やガードマンは交通整理に大わらわ。来年の開催も既に決まっているが、「後で警察に怒られるかもしれない」と苦笑いしながら「次回は同じ会場ではできないのではないか」と言う。会場近くには、横尾忠則のかの「Y字路」も散在する。何とも惜しい話である。(典)