繊維ニュース 編集部ブログ

2018 10 Dec

「柿」

 旧暦11月4日、七十二候では大雪の初侯、閉塞く冬と成なる(そらさむくふゆとなる)天地の陽気がふさがり、真冬が訪れる頃。先週は師走とは思えぬほど一日の最高気温が25℃まで上がり、昨日は10℃の平年並みに下がった。

 急に寒くなった夜に奈良に住む友人から富有柿が届いた。

 万葉歌人の柿本人麻呂の自宅に柿の木があったことから柿本と名乗ったという説があるほど日本で古くから柿が栽培されていた。史料に出てくる最も古いものは、正倉院文書に神護景雲四年(770)11月2日・奉写一切経料銭用帳「壱伯文柿一升直」という文書が残っている。

 栄養価の高い果物で薬品としても古くから使われていたようだ。抗発ガン効果の「カロテン」や「ビタミンC」が豊富に含まれ、風邪の予防、二日酔い、柿に含まれている「タンニン」は、血管を強くして血圧を下げる効果がある。ヘタを乾燥したものは柿蒂(してい)という生薬で、しゃっくり、鎮咳、鎮吐にも効く。

 寒い冬を薬効の多い柿で乗りきっていきたい。

 「篠ふかく梢は柿の蔕(へた)さびし」〈野水〉 (博)