私はコンサートのメインとなる、二人のチェリストと朗読のための《間違いの喜劇》の作曲と、ビートルズから《アイ アム ザ ウォルラス..." />

桑原 ゆう

2016 12 Oct

《間違いの喜劇》《アイ アム ザ ウォルラス》作曲ノート

"げん"結び「間違いの喜劇」公演、いよいよ明日さいたま公演をむかえます!

私はコンサートのメインとなる、二人のチェリストと朗読のための《間違いの喜劇》の作曲と、ビートルズから《アイ アム ザ ウォルラス》をチェロ二重奏に編曲しましたので、作曲ノートをこちらに載せます。

 

 

《間違いの喜劇》

 あまりにも偉大すぎるシェイクスピア作品への挑戦。大石先生の台本は、登場人物の心情や情景の描写、ストーリー展開などを削ぎ落とし、「会話が噛み合わないこと」のみにフォーカスしたとてもシンプルなもので、心情や情景を描写する音楽や効果音などでなく、音楽の中にあるもので「噛み合わない」ことを表現するよう求められ、さらに難しい挑戦となりました。色々と悩んだ結果、「噛み合わない」状態を聴き取るためには、まず、「噛み合っている」状態を定義しないとならないと考え、「噛み合っている」状態として長唄の「越後獅子」を据え、そのパラフレーズで全体を書こうと決めました。「間違いの喜劇」と「越後獅子」との間には直接的な関係はありませんが、自分がある程度使い慣れた楽曲であること、プッチーニの「蝶々夫人」やプロコフィエフの「ピアノ協奏曲第3番」(こちらは諸説あるようですが) などで旋律が引用され、少なからずクラシック音楽と関係があること、日本の旋律を用いることで、シラクサとエフェソスをどこでもない架空の街として演出できたらと思ったこと、などを理由に選びました。チェロは、二つの対立する町を映し出す鏡のような役割を担います。一方はシラクサの町、もう一方はエフェソスの町を象徴します。それに注目すると、この混乱の物語がさらによく見えてくるでしょう。

 

《アイ アム ザ ウォルラス》

 今なお、ジャンルを問わず、すべての音楽シーンに影響を与え続けるビートルズの楽曲から、「アイ アム ザ ウォルラス」を今回のために編曲してお届けします。初めて聴いたときは、ちょっとばかばかしく奇妙に思えましたが、よく練られた詞にルイス・キャロルの影響があったり、終盤で「リア王」のラジオ放送が効果的に使われていたり、内容の濃い文学的な楽曲です。原曲の構成とテイストは崩さないという制限を設けつつ、新しい楽曲として、ほぼ作曲するように編曲しました。サイケデリックと言われるサウンドが、チェロの二重奏というごく限られた編成でどのように工夫して表現されるかに注目してお聴きください。

 

 

"げん"結び ー音楽と文学ー

Vol.1「間違いの喜劇 ~The Comedy of Errors~」

 

さいたま公演: 10/13(木) 19:00開演 @彩の国さいたま芸術劇場小ホール

東京Ⅰ公演: 10/15(土) 12:00開演 @井政―神田の家―

東京Ⅱ公演: 10/15(土) 15:00開演 @井政―神田の家―

東京Ⅲ公演: 11/26(土) 19:00開演 @安養院・講堂

(東京Ⅰ・Ⅱ公演は1時間程度、さいたま公演・東京Ⅲ公演は、1時間半程度を予定しています。)

 

◆チケット

前売: 一般¥3,000、学生¥2,000

当日: 一般¥3,500、学生¥2,500

さいたま公演は、小学生以下のお客様を無料でご招待いたします。

 

◆演奏

佐藤翔 (チェロ、"げん"結び代表)

山田健史 (チェロ、ゲスト出演)

柴田友樹 (朗読、ゲスト出演)

 

◆作曲: 桑原ゆう

◆台本: 大石泰

 

 

 

「間違いの喜劇」は全プログラム共通で、他の楽曲が公演によって異なります。

 

<全公演共通演目>

桑原ゆう: 「間違いの喜劇」~ふたりのチェリストと語り手のための~ [2016] 初演

 

<さいたま公演>

レノン=マッカートニー / 桑原ゆう(編曲): アイアム ザ ウォルラス [2016] 初演

ベンジャミン・ブリテン: 無伴奏チェロ組曲 第1番 op.72 [1964]

池辺晋一郎: バイヴァランスⅠ[1997]

フランソワ・クープラン: 趣味の融合ーコンセール No.13 ト長調

 

<東京公演Ⅰ>

ベンジャミン・ブリテン: 無伴奏チェロ組曲 第1番 op.72 [1964] より

池辺晋一郎: バイヴァランスⅠ[1997]

レノン=マッカートニー / 桑原ゆう(編曲): アイアム ザ ウォルラス [2016] 初演

 

<東京公演Ⅱ>

ゲオルク・フィリップ・テレマン: カノン風ソナタ第1番ト長調 TWV40:118

ヨハン・セバスティアン・バッハ: チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007 より

フランソワ・クープラン: 趣味の融合ーコンセール No.9 ホ長調「愛神の肖像」より

     

<東京公演Ⅲ>

レノン=マッカートニー / 桑原ゆう(編曲): アイアム ザ ウォルラス [2016] 初演

ゲオルク・フィリップ・テレマン: カノン風ソナタ第1番ト長調 TWV40:118

ヨハン・セバスティアン・バッハ: チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007

ネッド・ローレム: シェイクスピアを読んで [1980]