桑原 ゆう

2015 09 Dec

エレクトーンソロ作品改訂初演

明日明後日と初演がつづきます。明日は両国門天ホールで、市川侑乃さんのエレクトーンリサイタル。拙作《月すべり》が改訂初演となります。

 

Yukino Ichikawa Electone Recital vol.4

 

 

2015年12月10日(木) 開場18:30 / 開演19:00

両国門天ホール (〒130-0026 東京都墨田区両国1丁目3-9)

料金 / 2,500円 (全席自由)

演奏 / 市川侑乃 (エレクトーン)

演目 / 野田暉行: HX-1のための""プレリュード""

   夏田昌和: Electro-Spairal『生命の梯子』

   桑原ゆう: 月すべり (改訂初演)

   山根明季子: エレクトーンをトレースした音楽 (委嘱新作世界初演)

   川上統: Marlin (委嘱新作世界初演)

http://www.yukinoichikawa.com/#!2015/c1kma

ご予約、お問い合わせ / electone.classicat@gmail.com

 

 

《月すべり》は、1回めの侑乃ちゃんのリサイタルの時に委嘱をいただいて書いたのですが、なかなか形にならず、本番の2日前くらいにでっちあげるようにしてなんとか完成し、そのまま初演をしていただく、というとんでもなく迷惑なことをしてしまいました。そのとき自分に課したものがまったく消化できないままでとても心残りだったので、今回最初からほとんどつくりなおすように改訂しました。改訂初演と言いながら新曲初演みたいなものです。

 

私が子供のころから1番馴染んできた楽器はエレクトーンで(ピアノをちゃんと始めたのは中学生後半のときと、遅かったのです)、エレクトーンで最初期の音楽の勉強をしてきたことが今の私の耳をつくっているのに間違いありません。エレクトーンコンクールに出ていたときも、そのときの自分なりにエレクトーンならではの音楽を作ろうとし、ある程度やり尽くした感じがあったので、作曲をする者として久しぶりにエレクトーンに向き合い作曲するのは大変難しかったです。

エレクトーンはやろうとすれば何でもできる楽器ですが、何かひとつの要素にフォーカスして書こうと思い、《月すべり》ではエレクトーンの鍵盤の大きな特徴であるホリゾンタルタッチ(鍵盤を左右にずらすタッチ)とアフタータッチ(鍵盤を一度押したあと、さらに深く押し込むタッチ)によるポルタメントに特化しました。タイトルの「月すべり」は草野心平の「河童と蛙」からの引用で、ポルタメントの「すべる」音から連想されています。いま新しい作曲の仕方を模索している時期でもあって、今までにしたことのない作曲の仕方をしてみました。ちょっと風変わりな曲で、データ作りも演奏も、本当にこんなのできるのかしら... と思いながら書きました。侑乃ちゃんにしか弾けないだろうと思って、とても楽しみにしています。

 

この曲を書いて、エレクトーンの鍵盤というのはスイッチで、スイッチがたくさん並んだものがオルガンの形をしているのだと改めてわかりました。エレクトーンを弾いていた時には、電気が無くてエレクトーンから音は生まれないし、実際の音は自分が演奏している楽器からはだいぶ離れたスピーカーから出ているということに意外と気づいていなかったように思います。鍵盤楽器を演奏するというよりは、音響自体を、空間に広がるとてつもなく大きなもの自体を、オルガンを演奏するかのようにして鍵盤の形をしたスイッチを操って自在に操作するという意識がエレクトーンには必要なのかなと思います。

 

山根明季子ちゃんと川上統さんの新曲も楽しみで仕方ありません。侑乃ちゃんのエレクトーンに対するこだわりをぜひ聴きにいらしてください!!