桑原 ゆう

2017 10 Feb

次回は神田の家公演です

げん結びVol.2「十二夜」、さいたま芸術劇場小ホールでの公演が無事に終わりました。写真はゲネプロのものですが、素晴らしい照明の演出で音楽を盛り上げていただきました。

 

 

 

 

田口和行さんの「十二夜」は、Vol.1の私の「間違いの喜劇」とはまったく違うアプローチで、「十二夜」って確かにミュージカルみたい!と思わされました。今回の公演では、声を出して歌うときの大きなパワー、歌うことの面白さ、楽しさを再発見することができました。次回は明日2/11神田の家での2回公演、12時開演/15時開演です。それぞれ20名様までの限定公演です。そのあと3/19の安養院公演と続きます。

 

12時開演の神田の家公演では、私の新曲、役者の言葉とテノール、チェロのための「かたち、あや、あるいはすがた」が初演です。なかなかシュールでヘンテコな曲にできあがり、自分で言うのもなんですが、これは一聴の価値ありかと思います!自分で変な曲だなあと思う作品ができあがることはそうそう無いので、ちょっと嬉しいです。以下、プログラムノートを載せます。

 

 

「歌」「詠」の字は、古来「うたふ」「ながむる」と訓じられて来たが、宣長の訓詁によれば、「うたふ」も「ながむる」も、もともと声を長く引くという同義の言葉である。「あしわけ小舟」にあるこの考えは、「石上私淑言」になると、更にくわしくなり、これに「なげく」が加わる。「なげく」も「長息」を意味する「なげき」の活用形であり、「うたう」「ながむる」と元来同義なのである。

「ああ、はれ―あはれ」という生まの感動の声は、この声を「なげく」「ながむる」事によって、歌になる。……

……たへがたきときは、おぼえずしらず、声をささげて、あらかなしや、なふなふと、長くよばはりて、むねにせまるかなしさをはらす、其時の詞は、をのづから、ほどよく文ありて、其声長くうたふに似たる事ある物なり。これすなはち歌のかたち也。ただの詞とは、必異なる物にして、かくのごとく、物のあはれに、たへぬところより、ほころび出て、をのずから文ある辞が、歌の根本にして、真の歌也……

……歌とは、先ず何を措いても「かたち」なのだ。或は、「文」とも「姿」とも呼ばれている瞭然たる表現性なのだ。歌は、そういう「物」として誕生したという宣長の考えは、まことにはっきりしているのである。

小林秀雄「本居宣長」(『小林秀雄全作品27 本居宣長(上)』、新潮社、2012年、pp. 258-259)

 

悲しい事や堪え難い事があったとき、私達は内部に感じられる混乱を整えようとして、思わず知らず長くため息をつく。そのような、私達が極めて自然に取る動作から「ほころび出」たものが、言語というものの最初の姿である、と本居宣長は言っている。私達が生きて行く必要上、われ知らず取る動作、態度、体制などが言葉の生れ出る母体であり、そこから「ほころび出」るものが言葉の原始的な形態であるとすれば、それは音楽の原始的な形態でもあるのではないか。言葉と音楽とは、一卵性双生児のようなものではないか。そのような問いをベースとしながら、「語る言葉、歌う言葉、奏でる言葉」の三者の関係性について考えるためにこの作品を書いた。語る言葉=役者の声、歌う言葉=テノール、奏でる言葉=チェロとして、言葉から音楽へのグラデーションで作曲することを試みた。

 

 

"げん"結び ー音楽と文学ー 

Vol.2「十二夜、あるいは、お好きなように ~Twelfth Night, or, What You Will~」

 

◆東京公演Ⅰ: 2/11(土) 12:00開演 @井政ー神田の家ー

<プログラム> 1時間程度の公演です。

桑原ゆう: かたち、あや、あるいはすがた (初演)

ベンジャミン・ブリテン:ザッヒャーのテーマ

田口和行 (作曲) / 大石泰 (台本): 「十二夜」~テノールを伴うチェロと語り手のための~ (初演)

 

◆東京公演Ⅱ: 2/11(土) 15:00開演 @井政ー神田の家ー

<プログラム>1時間程度の公演です。

ラッシュ (編曲:桑原ゆう): ライムライト (初演)

アルベルト・エヴァリスト・ヒナステラ: うた(Harawi)プネーニャ第2番「パウル・ザッヒャーへのオマージュ」Op.45 より

田口和行 (作曲) / 大石泰 (台本): 「十二夜」~テノールを伴うチェロと語り手のための~ (初演)

 

◆その後の公演

東京公演 Ⅲ: 3/19(日)17:00開演@安養院

 

◆ホームページ

http://genmusubi.weebly.com

 

◆チケット

前売: 一般¥3,000、学生¥2,000

当日: 一般¥3,500、学生¥2,500

 

◆演奏

佐藤翔  / チェロ

市川泰明 / テノール (ゲスト出演)

柴田友樹 / 語り (ゲスト出演)

 

◆ご予約・お問い合わせ

“げん”結び実行委員会 

Tel: 090-3520-8534(佐藤) 

E-Mail: genmusubi.m.w.l@gmail.com 

 

ご来場お待ちしています!