桑原 ゆう
すばらしい日曜日
日曜日、朝9時には鎌倉の山の上にいて、池田塾の有志の方々と歌の練習をしました。池田塾頭の古希のお祝いのために《山桜祝唄》を作曲したのです。


講義後に行ったサプライズパーティーのすみずみまでプロデュースしてくださった謝さんが、塾生のみなさんが今までにつくったたくさんの和歌の中からひとつ選んだのは目黒裕佳子さんのものでした。これに決めましたと、謝さんからメールが送られてきたその時から、目黒さんの賀歌の言葉はじんわりと私のなかにひろがり、音楽は全く苦労することなく自然にするするとできあがりました。謝さんの選択と目黒さんの言葉と、そして音とが、あらかじめ決まっていたかのようにぴったりとはまったのでした。とはいえども作曲には様々な工夫を施し、誰でも歌える音域におさめること、当日1回の練習だけで歌えること、歌の言葉がもともと持っている音声の動きを活かしつつ、音楽的に必要で適切な音の動きにすることなどを心がけました。伴奏はピアノなどでできたらよかったのですが、キーボードとアンプを持って行くのも難しかったので、メロディオンで伴奏することにしました。みなさんが迷子にならないように音を取りながら必要最小限の音だけ加える伴奏にし、同じリード楽器である笙の合竹から和音を借りてきたり(曲は変ロ長調なので移調はしましたが)、かえって和歌らしい雰囲気が出たように思います。ちなみに、デモの仮歌は妹のまこに歌ってもらいました。塾頭がサプライズパーティーを喜んでくださってとても嬉しかったのですが、さらに嬉しかったのが、みなさんが本当に楽しそうに歌ってくださったことです。音楽を共有することの大きな喜びを改めて感じました。
肝心の講義では、今回私は発表をしなければいけなかったのですが、そちらはなにか大事なことを全然言葉にできていない感じで心残りばかり... 特に「内の心の動きを外に現わそうとする身体の事」がどのように「文(アヤ)」として現れるか、そして「文」から音楽へどう発展していくのかの説明が足りず、自分の創作ばかりに話がかたよってしまい、口頭質問のときの姿勢が宣長や小林先生の言葉にちゃんと向かいあえていなかったと反省しています。でも、朝みなさんと私の作曲した歌を練習をしたことがみなさんの身体の中にあって、それと通じ合っているような不思議な一体感を感じ、体験するってすごいことだと、これも改めて思いました。

サプライズを終えたあとは新宿にすっ飛んで行き、海森での三瀬くんと大須賀さんのコンサートに立ち会いました。沖縄料理居酒屋でゴーヤジュースを飲みながらのコンサート。おふたりが苦心して考えたプログラムがすばらしくって、良い曲ばかりでバランスも良くて、居心地の良い楽しい時間。私の新曲も評判が良く、ひと安心でした。