芹澤 絵美

2018 18 Mar

富士山本宮浅間大社

 

3分咲きの桜が咲く富士山本宮浅間大社に行ってきました。

そこに、昨年の「歌会始」の際に皇后陛下がお詠みになった御歌が書かれていました。

 

土筆(つくし)摘み 野蒜(のびる)を引きて さながらに 

野にあるごとく ここに住み来(こ)し

 

天皇皇后両陛下がお住まいになる御所には、

様々な野草が生育しており、季節の折々にそれら野草に親しんでいらしたそうです。

「あたかも野に住むように過ごして来られた御所での生活を詠まれたものだ」

と解説されていますが、私が最初にこの御歌を見たときに一番に感じたことは、

幼い頃に故郷で親しんだノビルやツクシを思い出し郷愁感を誘うこと、

他所から来ても野草のようにその土地に根付いていくこと、

そして、たくましく生き延びているように思われるこれら野草も、

いつの間にか自然には見ることも触れることもなくなってきた現実的な儚さが重なり、

なぜか鼻の奥がツンと痛くなるような切なさを感じました。

 

私も日本を遠く離れた地で野にあるごとく暮らしています。

 

歌を見る人ごとにさまざまな思いを起こさせる優れたお歌だなと、

畏れ多くもさすがでございます、と深く感じ入りました。