芹澤 絵美

2020 10 Jul

冬のヴィンヤード

 

さて、冬のヴィンヤード・ワーク、剪定が始まっています。

スローン・ヴィティカルチャーの元で行う初めての剪定です。

タンタラス、マノ・ウォーと2つのヴィンヤードで働いてきましたが、
それのどれとも違う考え方での剪定です。

メイン・プルールニング(主剪定)が先行して剪定していき、
次にストリッピングと呼ばれる不要な枝を取り除く作業が入り、
最後にタイ・ダウン(誘引)が行われます。

私はだいたいタイ・ダウンを任されるのですが、
前二つのヴィンヤードは、スパー(短梢)をすでにメイン・プルーニングで選んであり、
残された2本のケーン(長梢)をフルーティング・ワイヤーに誘引タイ・ダウンしていく方法でした。

言ってみれば、スパーを必ず2つ残すやり方です。
タイ・ダウンしていく時に折ってしまった場合はそれもスパーにします。

けれど、スローン・ヴィティカルチャーのやり方は、
メイン・プルーニングではスパーをカットせず、3〜5本のシュートを残してあり、
どれをスパーにしてどれをケーンにするかの判断をタイ・ダウンの人に委ねています。

スパーはケーンの必ず下側、内側に来るという基本ルールがあり、
それはどのヴィンヤードも同じなのですが、
もしもタイ・ダウンの時にケーンを折ってしまった場合は、
スパー候補のシュートをケーンとしてタイ・ダウンするところが他のヴィンヤードと違う点です。もしも、ケーン候補のシュートを2本とも折ってしまった場合は、
スパー候補を2本ともケーンに使いスパー無しにするか、スパー1,ケーン1という風に選べます。

なぜ、スパーよりもケーンを残す方法なのか?
マットが丁寧に説明してくれました。

先にスパーを作ってしまうと、
ケーン候補のシュートを折ってしまったときに、
そこには最大4つのスパーが残ることになり、単純にブドウの収量が減るのと、
幹が送り出すエネルギーがすべてそこに集中し、ブル・ケーンと呼ばれる極太のシュートが育ってしまうからだそうです。

スパーは上にあるケーンの成長をサポートする役割も担っているので、
やはり理想的なのはケーン2、スパー2ですが、
ブドウの収量を減らさない&ケーンの根本付近の蕾から丁度良い太さのシュートが複数出ることから、ケーンをスパーよりも優先させるそうです。

幹から複数の分岐点を経て枝に流される樹液の流れを想像しながら、
どのシュートをケーンにするかを慎重に選んでタイ・ダウンしています。

けれどもマット曰く、
どれが絶対的に正しいというのは無いので、
土地や品種に合わせて多少やり方が異なるのは当たり前とのことです。

私は、自分の知らないやり方を知るのが大好きなので、
また新たに知識が加わってとっても楽しいです。

剪定作業、
ヴィンヤード・ワークの中で一番好きです。