山中 健

2021 26 Oct

高田賢三氏の毎日ファッション大賞「ファッション文化特別賞」表彰式に出席して


昨日行われた毎日ファッション大賞の授賞式。今年も推薦委員を務めさせていただき、表彰式に出席しました。今年は大賞は「トモコイズミ」の小泉智貴氏、新人賞・資生堂奨励賞は「CFCL」の高橋悠介氏が受賞。今、日本のファッション業界で最も注目されている新たなタイプのデザイナーが受賞し、会場は明るいムードに包まれていました。

そして特別に設けられた「ファッション文化特別賞」は、故人である高田賢三氏に贈られました。式には、長年ビジネスパートナーとして仕事されてきたセ・シュエットの鈴木三月代表取締役が登壇。スピーチの中で「高田賢三の遺志を継ぐのが私の役目」とおっしゃったのが印象的でした。

高田賢三氏が、取り掛かっていたのがライフスタイルブランド「K-3」の立ち上げ。2020年1月にパリ郊外で開催する大規模インテリアトレードショー「メゾン・エ・オブジェ」に出展。その後、ミラノの「サローネ」への出展を予定していましたが、コロナ禍により叶わないこととなりました。

実は私は、2020年1月のパリで行われた同ブランドのお披露目会にお邪魔しました。その時のことを、式の間ずっと思い出していました。

お披露目会が行われたのは、パリの左岸メトロの「セーブルバビロン」駅からすぐの高田氏のご自宅・アトリエでした。そのご自宅・アトリエに「メゾン・エ・オブジェ」で展示するアイテムを並べて、会話を楽しみながら商品を説明するというもの。高田氏もいらして、商品を並べたり、陳列を直したりしていました。私が高田氏にお目にかかったのは2回です。一つは、私のマレーシアオフィスの石橋さんがシンガポールの「F I D Eファッションウィーク」のアドバイザリーをさせていただいた時。特別ゲストとして来場されてご挨拶をさせていただきました。そしてこのご自宅でのお披露目会です。どちらでも高田氏は紳士そのもの。誰の話も丁寧に聞き、柔和な表情と気さくな雰囲気で対応していました。

 

ロゴの「K三」が、角度によっては「大川」に見えるという話を別の日本人ゲストがしていたら、高田氏は私の発言と勘違いして近づいてきて「本当ですね。気づきませんでした。日本の方にお見せする時は気をつけますね」と笑顔で話しかけてこられました。小さなエピソードですが、高田氏の人柄の良さが伝わるものだと思います。

昨日の式では、高田氏の軌跡が映像で映し出されました。高田氏の偉業とそのお人柄を偲んだ時間でした。