内田 文雄

2021 26 Oct

上海に「& Other Stories」がローンチ!

久々の投稿です。

日本の様々な方々から多くの質問を頂いている「現在の中国のアパレル状況」について書かせてもらいます。

簡単に書くと、隆盛を極めたファストファッションブランドブームが去り、商品クオリティ、性価比(価格と商品そのものの価値が見合っているかどうか?)が重要視され、コロナ禍要因もあり自国ブランドを応援し購入するブーム、更に言うとリアル店舗だけではなくオンライン(ライブコマース)での購入に拍車がかかっている状況になっているのではないかと思います。

 

中国では2018年辺りから外資系ファストファッションブランドの撤退が相次ぎました。「TOP SHOP」「New Look」「Forever21」「OLD NAVY」「Superdry」...など。一時期はトレンドを追ったブランドが台頭していました、安かろう悪かろうお構いなしに、そのシーズンだけ着れれば良いという風潮もありH&Mなどのローエンドブランドが人気を博していました。しかし上述のようにその時代は終わりを迎えつつあります。

 

これには消費者の商品購入動機の変化も大きく影響しています。Z世代を中心に外資系ではなく国潮、潮牌(中国アパレルが作る中国ブランドを着よう!という流れ)がブームとなったことも要因です。当然ながら中国らしく国威発揚もベースに有ります、特にオリンピックなどでナショナルチームがユニフォームとして着用するスポーツ系ブランドのANTA、LININなどが、身頃や背中、腕に漢字をあしらったデザインを発表し、一大ブームになったことも記憶に新しい出来事でした。

 

同時にコロナ禍で海外旅行に行けない状況下、改めて中国ブランドが見直された事も一因です。Z世代だけでなく他の世代でも自国ブランドを応援する!を旗印に、外資ブランドではなく中国ブランドを購入するブームにもなりました。その好事例と挙げられるのがダウンウェアで40年以上の歴史があるBOSIDENG(ボストン)です。MK戦略も当たり20年秋冬は一大BOSIDENGブームになりました。同時に新疆綿問題も更に拍車をかけた事件でした、これによりH&MやNIKEは不買運動の餌食にもなりました。

 

その結果、多くの中国アパレルブランドが一時期の低迷期を経て、コロナがきっかけで戦略変更(リアル店舗強化策と同時にオンライン販売比率重視)を行い息を吹き返しました。幾つかのアパレル企業の2021年の数値を見ると、コロナ前2019年の売上を遥かに超える現状となっており、オンライン売上比率が軒並み40-50%に達した企業も出てきています。

 

そういう状況のなか9月末にH&M傘下のミドル-ハイエンドブランドを中国の1線都市に新たな店をローンチさせました。上海の淮海路iapmに「& Other Stories」が、北京三里屯に「Arket」をオープン。ファストファッションやローエンドブランドが低迷する状況を察知し、ラグジュアリーブランドが入る高級商業施設をターゲットにローンチをしたのです。

 


 

H&M傘下では既にミドル-ハイエンドの位置付けの「COS」を中国全土で40数店舗を展開しているのですが、ブランド特徴が違うとはいえ、同じラインのブランドをローンチさせても勝算が有る!と出した結論なのでしょう。

以下にミドル-ハイエンドブランドの中国マーケットでの展開状況が分かる資料を添付していますが、確かに「COS」「& Other Stories」「Arket」、INDITEX傘下の「Massimo Dutti」、FR傘下の「Theory」など、どちらかと言うとハイエンドに近いブランドを改めて中国で強化させていくという方針が各社共通である事も事実です。

 

2020年はコロナ禍要因、オンライン(ライブコマース)隆盛も手伝い、リアル店舗が伸び悩んだ年になりました。21年は上述の様に中国アパレル企業、ブランドも息を吹き返し、力を付けてきて新たな局面を迎えました。そこにH&Mのような外資系のみならず、中国アパレル傘下のミドル-ハイエンドブランドもマーケット参入するといった、新たな戦いが始まりました。

日本以上にファッションの流行り廃りが早い中国、来年以降どのような状況になるのか?クライアントである中国アパレル企業さんと共に仕事をしながら、引き続き、じっくりマーケットを見て、分析していきたいと思います。

 

それでは!