生地 雅之

2022 12 Sep

値上げ力

昨今、原料高騰につき価格を引き上げる企業が目立っています。その上げる力を「値上げ力」と呼び、評価されている場合も散見されます。本当に評価に値するのでしょうか?
確かに、価格を上げるには、ブランド力(商品力も販売力も)が伴い、お客様にも理解される場合は問題ないのですが、そうであれば、いままで上げていなかった事は顧客の理解度をどのように捉えていたのでしょうか?

価格が通用するのに、価格を上げないで抑えていたのでしょうか?それはそれで企業戦略の一つなのですが、その場合価格を上げれば多少売れ行きが悪化するものの、他に代わるものが無ければお客様は元に戻るでしょう。しかし一過性でもそれまでの顧客にとっての恩恵(評価)を無くするものなのです。

小売業はローカライズ&カスタマイズしなければ生き延びないのですから、地域に密着した顧客を捉え、[カスタマイズ」の他に無いコンテンツ開発・仕入・展開や、自店の特有のサービスでもない限りは勝てないし、生き延びないのです。

「ローカライズ」については、オンラインサイトはどこからでも買えるのですが、オンラインサイトでさえ、自社名・自店名を知って頂いた方が自社オンラインサイト名を検索して頂いているのが実態であり、サイトにおける顧客の住所はどこがメインなのか?認識された顧客がいらっしゃるところにプロモーションを仕掛けているのでしょうか?

首都圏の企業のサイトは殆ど一都三県や関西のサイトは近畿地方の方が大半を占めるのが事実なのです。要は知名度がどこまで広がっているのかがすべてであり、過去に某百貨店のTOPがお金持ちが沢山生活されている国から、自社サイトに買いに来てもらいたいとのお考えでした。お店やサイトを認知されていない人が、そのサイトを検索できるのでしょうか?「買わないお客様の声よりも買ったお客様の声」を聴くべきです、

要は、その国にその企業の地名度が浸透していない状況ではありえないのです。当然その戦略は「絵に描いた餅」になっているのです。小売業ならショップブランド力(企業名・店名)とグッズブランド力(PB)の掛け合わせたブランド力の浸透(認知)度がすべてあり、メーカーで言えば、自社グッズブランドの知名・認知度の広がりがすべてを制するのです。

その点だけを見れば、関西の某百貨店の海外店舗戦略(リアル店は1店舗のみで知名度を広げ、「コロナが終息すれば」日本のお店に来店頂き、商品力の強さを認知していただき、帰国後にはサイトへの導入を狙う)は正しい戦略なのでしょう。時間は掛かるものの実直な姿なのです。サイトそのものの不備は改修が必要ですが、

「値上げ力」に話を戻すと、「値上げ力」を認めるならば、そのようなブランド力の知名度・認知度やオンリーワンの商品力が無い限り価格の自由コントロールは簡単ではないのです。価格を上げて売上額を落とすのなら「愚の骨頂」です。

販売量は落ちても、総額の売上額を最低維持していて、利益率が値上げ前程度に確保できていないと利益額の維持など「夢のまた夢」なのです。これが出来るなら「値上げ」を否定するものではありません。「在庫」のリスクを持つ企業が価格決定権を持っているので、消化や委託とは関係なく、PBの開発が必須なのです。

イオンが今年PB(トップバリュ」の値上げを「やせ我慢」と自ら表して、数品目以外上げなかったのは素晴らしいのです。他のNBがどんどん値上げしており、上記のようなブランド力や商品力の伴っていないものまで値上げしているので、その中での殆ど値上げしない方針は素晴らしいものです。過去は小売業が仕入先のコスト管理(値上げさせない力=仕入先に生産の努力をさせる)にも寄与していたのです。

この件で、イオンもPBシェアは上がってくるでしょう。しかし、まだまだ商品力が無いPB商品も多く、そこは淘汰されるので、修正が掛けられるべきなのです。勿論、小売業は自社・自店のデータの解析力の無さは改善出来ていないので問題です。売上は顧客の「評価バロメーター」であり、利益は経営者の「評価バロメータ―」なのです。

過去には販売先が上代を決め、売れなくなることを想定し、仕入先には値上げを認めなかった事も多く、仕入先は厳しいと思いながら「仕入コスト」の削減に尽力したものでした。精一杯やっていて限界にきているからの止むを得ない「値上げ」と各社は言っています。仕入先は利益の出ない仕事は受けないので、僅かでも利益を確保しているのです。勿論、生産効率の向上や原価率の低減の努力の上に成り立っていたのですが、

しかし、MD力(ブランド力・商品力・売場展開力・販売力)を改善しないでの「値上げ」や内容量を減らしての「価格維持」などはマーケットに通用する筈がないので、売上額という観点での顧客評価がなされてくる事は「自明の理」なのです。ブランド力・商品力とは「価格を通す力」としてリンクしているのです。

上記イオンのPBも売上データを駆使して、改良点を見つけ、商品力での改善を望むものです。勿論ブランド力の構築は前回のブログの「イオンスタイル」に記載の通りであり、まだまだ伸び代は残っており、セブン&アイGと遜色のない営業利益額も同等に確保に迎えるのです。やろうとすれば出来るのです。やり方はいくらでもあるのです。

現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。

是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。
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