生地 雅之
頑張れ!百貨店-2
昨年3月より、コロナの影響で緊急事態宣言や蔓延防止策等、小売業のみでなく経済そのものが揺らいできています。昨年3月には百貨店も「猫も杓子もEC強化」に乗り出し、一番遠い施策に向かっていました。小職はそれまでも小売業が生き残る術はPB(プライベートブランド)に尽きると言い続けてきています。百貨店からは無謀だ。誰も出来る人はいなくなっているとの声が聞こえていますが、敢えて言い続けているのです。
自前でやると既に誰もできなくなっているのですが、他力依存では十分可能なのです。そう簡単にはPB開発は不可能ですので、その繋ぎとして得意分野である外商強化に目を向けて様々なメディアを使って、提言してきました。
主旨は過去にこのブログにも多く記載してきていますし、FASHION系業界紙や一般メディアのオンラインにも記載してきましたので、ご一読下さい。PBへの通過点としての「自主編集売場構築」も、
百貨店の売上は、リアル(既存売場)約78%+外商売上約20%+EC売上約2%程度で成り立っており、すべて売場からの計上なのです。要は売場の販売員は売上の80%未満しか売っていなく、その他は他の手法に依存しているのです。また、コロナ前の外商やECの扱いは酷いものでした。リアルが閉まったから脚光を浴びてはいますが、
外商マンは売場の商品すべてを熟知している人はいなく、お客様から要望されたものや自ら売り込みたいモノのみは知識も持とうとされるのですが、店全体のすべての商品の把握などは出来ていないのです。某百貨店のコンシェルジュ施策なのは「絵にかいた餅」なのです。
もう一つ、自店の売上をコロナは関係なく10% 程度押し上げようとすると、ECなら5倍、外商なら50%程度に相当するのです。勿論外商の50%UPが容易いと言っているのではなく、どちらがと言う意味なのです。顧客の把握度合いについても外商のお客様はある程度手の内にはいっており、EC客は把握できていないのが実情なのです。
また、百貨店売上の10%UPについては、難しいと考える向きも多いのですが、攻めなければ結果維持でさえままならないのです。前向きな姿勢を求めているのです。
百貨店の縦割りが相互補完を駄目にしているので、各パーツの責任者ではなく、営業本部長クラスが全体の10%UPを目指さないと、維持でさえとても不可能なのです。
要は、自社ECの売上を5倍伸ばすには、他社のリアル客を取得すれば自社客には影響しないのでよいのですが、実態はハードルが高く、自社リアル客の自社ECへの取り込み(暖簾慣れしている顧客)をメインに考え、そのリアルの穴を他社リアルから取り込みを考えないと全体の10%UP等は至難の業なのです。
一百貨店EC売上の5倍は、ECであれば百貨店業界のECすべてを各社から取り込まないと不可能な金額であり、その金額を他社から獲得するにはリアルからしかないのです。しかし、リアルからは暖簾跨ぎさせないとNGであり、百貨店層は他のFBやSC層には移行しないので、シェアの取り合いしかないのです。しかし、リアルの落ち込みをECの現在の伸びでカバーできているのは約1/6程度しかないのです。ECは将来には必要でも即戦力にはなっていないのです。
勿論、百貨店客は全体では増加傾向にはなく減少傾向ですが、また百貨店客は暖簾にくっついているので、自店に鞍替えさせるのは大変ですが、上記理由から一番近い方策なのです。
これを全体バランスで考えるのが、リアルも外商もECも管轄している営業本部長なのです。自社のEC売上は自社リアルから暖簾跨ぎではなく、チャネル跨ぎで移行させて良いとの指示を出し、リアルを補填するのには他社のリアルからのチャネル跨ぎではない暖簾跨ぎをさせる指示を出すのです。全体で伸ばす施策を出す事こそ、営業本部長の仕事なのです。
外商やECは別の管轄で責任者がいるから、などと言っている間はTOTALのUPなどは「夢のまた夢」なのです。要はTOTALで維持程度であれば、ECの投資赤で意味をなさないのです。
しかし、外商と言えど呉服系では売上の30%強、電鉄系では10%程度で、全体の20%程度しかなく、のこりの80%のダメージをカバーするものではありません。本筋は百貨店が失いつつあるメイン顧客(百貨店マス)の復活を目指さなければ、到底カバーできものではありません。
百貨店マスとはユニクロのような一般ベーシック層ではなく、百貨店層のベーシックなので、ターゲットは全く異なるのですが、百貨店はユニクロ等の台頭に押され、逃げ出すように自店メイン層には目が向いていません。
このコロナも含め、経済環境の変化を見据え、自社・自店顧客のメインを再度見つめ直し、そこに向けた最善の施策を打たなければ、ニッチな戦略のみでは生き延びる事は不可能です。
小職の「外商強化策」も、将来に向けた「ECの強化」も本来百貨店の持つ強み(リアル)には現在は勝てません。理由は緊急事態宣言が解除された後のリアル売上の復活とECの低迷を見る限り、同じものを時短で購入される人はECも継続されるでしょうが、百貨店での「買い物の楽しみ」を求めている人にはまだまだチャンスはあります。もっと「店での買い物の楽しみ」を商品も含めて、磨いて欲しいものです。
現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。
是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。
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