生地 雅之

2017 25 Dec

三越伊勢丹HDSの向かう道

小売業界は、昨年まで厳しい環境下に置かれ(今年も?)、業績が悪化している企業も多く出てきています、しかし、反対には儲かっている企業も多くあります。その差は何なのでしょうか?ずばり、経営者の力量の差なのです。

 

業績が良化している企業も、悪化している企業も、ビジョンは割と明確に設定されているケースも多いのですが、自社の立ち位置に認識が的確ではなく、手法が間違っている事が結果を出せない要因の大半なのです。(ビジョンの明確化については別途)

 

三越伊勢丹HDSは本年4月に社長が交代し新体制になっており、今までの方向から大きく変化してきています。セブン&アイHDGSとは異なり、一度腰を屈めて経営基盤の見直しに入っている状況です。本業の百貨店はシュリンクしても利益体質に向かおうとしています。

 

ストアーズ社のストアーズレポート12月号にも大手百貨店各社の構造改革の方向性が記事にされ、営業利益額ではJFR、高島屋、H2Oよりも下回っていますが、他社に比べてもいままでの経費の使用方法を見直しすれば、十分に明かりが見えてきます。

 

前体制では無駄な経費の見直しを言われていても、先行投資という名の下に経営や現場には本当に必要か否かの目線軸がなかったと見受けられます。では現在にその目があるのかは疑問ですが、当面凍結されていたのは無暗に使うよりは正しい選択でしょう。

 

現在上手く行っている経営バランスは、経営者と実務部隊のTOPを分けて二人三客になっていることが多いのです。ここでいう経営者とは代表権を持っているという意味で、実務部隊のTOPとは取締役でも、代表権がなく営業本部長等のラインのTOPを兼務している人なのです。

 

これはJFRや高島屋の経営と同様のスタンスです。経営と現場を両面持った経営者は創業者的なFRや、ニトリなどにはいらっしゃるのですが、百貨店ではH2Oの過日阪急本店を劇場型にリニューアルされた方が最後と思われます。これを狙っていても中々、、、

 

この二人三脚では、経営者が90%経営に専念し、営業現場の声を10%聞く耳を持ち、現場のTOPは営業実務を90%精通し、10%経営者との会話が出来うる人材であるべきなのです。現在この10%を重ねられているとは言い難い状況でしょうが、それに向けて改善をされて行けば、

 

また、経営戦略も漸く中期計画を発表され、取り敢えず一段落状況です。急な体制変更でなかなか先が見えないので、精査されているとはまだまだ見えないのですが、、前体制では考える事自体が無駄になっていたからでしょうから、これからです。

 

しかし、新体制の布陣も伊勢丹特有の決定・指示されたことに徹底・実行できる幹部が多いので、しっかりと先を見据えて、的確な指示を出せば実行達成力はレベルは数段高いのです。要は適正な方針と的確な指示を出せるか否かなのです。

 

地方店の再生も、高島屋は全店黒字化と発表されており素晴らしいものです。三越伊勢丹はまだまだ周回遅れです。一昨年に地方店の再生方法を総論で繊研新聞2016年12月9日付にて掲載・提言していましたので、ご参考まで。

 

自社の立ち位置、実力、可能性のある領域の把握、強みと弱み、そして実践できる人材の有無がすべてを握っているか否かなのです。これを冷静な第三者目線で俯瞰してみると、自社のスタンスが見えて、ゴールとの差を直線で走るように手法を導き出す事に尽きるのです。

 

これを俯瞰できる経営者でないと、目標は上手く達成できません。「良い商品を作れば売れる」とか、「良い売場を確保すれば売れる」とか、様々な考えの経営者がいらっしゃるのですが、完全に間違っているのです、勿論、良い商品を企画、生産、展開する事は当然であり、良い売場を確保しての展開も重要ではありますが、経営とは大きく異なるのです。

 

経営者とは、自社が利益拡大に向けて、どの様なビジョンを示し、目的である利益拡大という戦略を自社領域内で明確に立て、手法である戦術を自社でできうる可能な枠内で設計し、それでも届かなければ、その部分を外部の「知恵」を買ってでも成し遂げさせる事が必要不可決なのです。要は部下を使って結果を出させるスキーム作りと運営が業務なのです。

 

是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。

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