生地 雅之

2020 08 Jun

百貨店アパレルの異業態への参入

最近、百貨店の低迷に引きずられているのか、百貨店顧客向け商品開発が覚束ないのか、その両方なのかは別にして、百貨店アパレルの低迷が叫ばれて久しいのです。

 

オンワード樫山の大規模な店舗閉鎖、三陽商会の企業再生、レナウンの民事再生等です。

過去に各社は百貨店以外のチャネル模索を始めていたのですが、中々結果が出せなかったのです。

 

オンワード樫山はフィールドオブドリーム、組曲ファムなどから、シェアパークまで広げ、組曲ファムはネーミングを百貨店展開ブランドという組曲を外し、フィールドオブドリーム等は単独事業部であったものが、他のSC向けブランドとの事業部統合を余儀なくされていたのです。

オンワード樫山は10年前に現社長が言われていた当時存在していた既存事業(百貨店向け事業)の在庫管理の厳しさが徐々に失われていたと思われますが、現社長がTOPに就き、その厳しさを元に戻されるでしょうから、そう心配はしていません。その手腕を期待しています。

 

三陽商会は数年前に脱百貨店と称し、FB向けブランド(MPS=マッキントッシュ・フィロソフィー・ストア)を開発し展開しだしていましたが、バーバリー喪失以来、三陽商会を支えていたのは百貨店事業(前年比95%程度を維持)だったのです。ECの伸び率は高くてもまだシェアも低いので営業利益額としては不足であり、FB向けブランドは売上不振で先行投資も回収ができない状況だったのです。

 

レナウンは10年間中国企業の傘下で結果を出せなく、中国企業に見限られたのでしょう。昨年の150名の希望退職を中止した事により、前々社長の中国とのHOT-LINEも崩れ、結果その2倍の300人規模の希望退職を募るほどに傷が広がったのです。レナウンはそれでもまだ国内での安定ブランドのダーバンを有し、世界に通じるアクアスキュータムを保持しているのです。SC向けにはアーノルドパーマータイムレスを展開出来ている百貨店大手アパレルなのです。儲かっているかは別にして、

 

上記3社が脱百貨店と称し、FB(ファッションビル=ルミネやパルコ等)やSC(ショッピングセンター=ららぽーとやイオンモール等)向けブランドを開発し、結果が出せていないのは何故なのでしょう。答えはFB&SCに来館される顧客マーケティング不足なのです。FBとSCのメイン顧客の違いは過去からいつも提言していますので、ここでは割愛させて預きますが、

このマーケティングを徹底すれば、見えてくる事は多々存在します。

要は、FBやSCのお客様(ターゲット)は百貨店顧客ではないのです。

 

この層のお客様は品質は出来れば高い方が良いが、それによる価格UPを認めないのです。

一般的はFB衣料専門店の価格ラインは百貨店の50%OFF程度であり、それよりも高くすると

FBでは売れないのです。極端に言うと60%OFF程度にすれば爆発的に売れるのです。

SCでは百貨店の60%OFF程度であり、ブレークするには70%OFFまで必要なのです。

勿論、国産でなくても良いのです。彼らが欲しい商品であれば、、欲しくない商品は国産であろうが購入されないのですから。要はブランディングが出来ていない段階で、価格より高い付加価値を付けられないのが実態なのです。

 

上記企業がFBやSC向けと称し、百貨店の30%OFF程度での商品価格設定が災いし、FBやSCの中でも売れない状況に陥っていたのです。百貨店アパレルの稼働できる工場に固執せずに、この価格で作れる工場の模索まで一から構築しないとFBやSC顧客向け適品などは出来ないのです。

 

それまでのFBやSCで展開して売れているショップ(SPA等)を参考にはしなかったのでしょうか?百貨店アパレルだから、彼らを上から見ていた訳ではないでしょうが、少なくとも彼らは先駆者であり、営業利益率などは百貨店よりも高く、5~15%を確保できている企業なのです。

参考にならない筈はないのです。百貨店で通用するブランド名などは不要であり、ネーミングは最初は著名でなくても良いのです。売れたらそのブランド名が光ってくるのです。FBやSCやGMSターゲットのマスに売るという事はそういう事なのです。ラグジュアリーブランドの様な「先に光あり」でなくとも良いのです。ラグジュアリーブランドも光るまで我慢し続けていたのですが、このマーケットはそのような我慢をする必要はないのでしょう。我慢している間に淘汰されます。

 

百貨店層は小売業の4%程度の6兆円弱であり、その他のマスのターゲット顧客とは全く購買パターンが異なるのです。百貨店顧客で稼ぐのなら、百貨店での展開で、如何に付加価値の付いた商品を開発し、価格以上に価値を百貨店顧客層に理解して預く以外に道はありません。

勿論、ユニクロのような多量販売ではないのですが、百貨店商売でもマスでの商売を基本とすべきで、百貨店客のメイン(マス=ユニクロの規模感とは異なっても)を狙うべきなのです。百貨店での少品種多量生産∔販売を狙うべきなのです。

 

どちらにせよ、アパレルもお客様との接点を自ら持たなければ存続できないのですから、小売業よりは距離は遠いですが、BtoCに一早く向かうべきでしょう。百貨店も自ら作る機能を持ち、アパレルも自ら売る機能を持つことが不可欠な時代になっています。つまり百貨店も自社・自店の顧客ニーズを的確に把握し、アパレル展示会やアパレルの展開商品にそのニーズの商品が無ければ百貨店は売り上げも利益も確保できないのです。

逆に言えばアパレルは卸先任せにして「売れない・売ってくれない」と嘆くだけでなく、自らの手で売らなければ、売上や利益の確保もできないからなのです。

それに付けても、自社・自店顧客のマーケティングの精度が、その成否を握っている事は否めない事実なのです。

 

現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。

是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。

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