小島 健輔
女性の化粧も仕事向きに変わったの
建て替え開業して“ハイブリッド百貨店?”に変貌した大丸心斎橋本館は、最近のトレンドに漏れなく衣料品とりわけ婦人服を圧縮して化粧品を拡充していた。伊勢丹の新宿本店も今秋、二段階で化粧品売場を1.5倍に拡張し、その分、婦人服を圧縮する。17年11月22日の当ブログ『伊勢丹新宿本店の‘怪’』で指摘した、売上シェアに見合わない化粧品売場の異様な狭さが二年近くを経てようやく解消される。
インバウンドのみならず、国内消費も女性の化粧品・美容サービス支出が衣料・履物支出を上回るに及び、装いの主役は服飾から美容に移った感があるが、そのトレンドは衣料品とは必ずしも一致しない。むしろ衣料品以上にローカル化しているのかも知れない。
そんな風に感じたのは、欧米コレクションシーンのメイクアップと国内のメイクアップがどんどん乖離しているからだ。メイクは専門外なので素人判断で申し訳ないが、モードトレンドが70年代や80年代を向いているのに、日本女性は大人はナチュラル、若い娘はオルチャンを志向しているように見える。
最近は服装では世代を見分け難いが、メイクは結構、世代が判る。大人ほどナチュラルで若いOLほどメイクが派手だが、アラサー・アラフォーの美魔女メイクは傍目にも痛い。眉毛とリップを強調する若い娘のオルチャンは80年代風でもあるからモードトレンドと共通しているようだが、ベースのあっさり感はモードトレンドとは異質だ。
それはともかく、大丸心斎橋本館の化粧品売場で目についたのは、お試しカウンターのミラー照明がブランドに拘らず悉く“白”だったことだ。“白”という見えがかりはほぼ4000kだと思うが(近々、カラーメーターで測ってみたい)、かつて外資ブランドのミラー照明はほとんど3000k以下だったことを思えば隔世の感がある。
それだけメイクがナチュラルになったのかもしれないが、むしろ女性の社会進出が大きいと思う。アフター5のシックな室内照明(2500〜2900k)に映えるより、昼間のモダンなオフィス照明(4000k前後、工場は5000kが多い)に映えることが求められるようになったのだろう。女性の装いがすっかり機能的になってモードから乖離したと同じく、メイクも仕事向きに変わってしまったのかも知れない。