小島 健輔

2019 08 Apr

クリエイションの蹉跌

 

 エイ・ネットは「ツモリチサト」事業を国内は19SSで、海外も19AWで終了すると発表したが、同社は14年にも「スナオクワハラ」事業を終了している。同社は「ネ・ネット」「メルシーボークー」など他ブランドも苦戦が続いており、今後も終了するブランドが出てくると懸念される。
 同じイッセイミヤケグープでも株式会社イッセイ ミヤケが展開する「プリーツプリーズ」や「BAOBAO」は絶好調だから、クリエイションブランドがすべてダメということでもない。1月29日の当ブログ『クリエイションとマーチャンダイジング』を読み返していただければ判ると思うが、両者の明暗はリ・コンストラクト系とアーキテクト系の違いに起因しているのではないか。
 リ・コンストラクト系でも「コムデギャルソン」や「サカイ」(阿部千登勢)は好調だが、これらは作り手がクリエイションを意図して完成させず、使い手(着る側)が着こなし着崩しをクリエイションできる応用余地を仕組んでいるように見える。
 80年代のクリエイション幻想を抜けられないまま90年代のデフレとカジュアルシフト、08年来のモバイルSNSによる情報主権の消費者移行とファストファッション旋風を経て古典的な「ファッションシステム」が崩壊し、14年には「ノームコア」を宣言してギョーカイはギブアップした。作り手が発信する「クリエイション」が販売消化の壁に突き当たって挫折し、使い手が創造する「ウエアリング」へとファッションの主導権は移ったのだ。
 以降、キモノ的な“抜け”やオーバーサイジングが広がってフィットが一変し、スポーツウエアやドームウエアが日常化してカジュアルが「アスレカジュアル」へ変貌。ストリートの「ウエアリング」がトレンドをリードして、「クリエイション」は好事家相手のオタクビジネスになった感さえある。
 クリエイションがそんな現実に対応するには提案の完成度や鮮度のみならず、レイヤードやフィット、合体・分解・変態といった着る側の着こなし着崩しの創造性(クリエイション)を引き出す仕掛けが不可欠だ。アーキテクト系クリエイターがコンポーネンツなマーチャンダイジングで着る側の「クリエイション」を引き出す一方、リ・コンストラクト系クリエイターの多くはそれができなかったのだ。
 そんな見方をすると、「コムデギャルソン」や「サカイ」は実にレイヤードや合体・分解・変態が楽しめるよう工夫?されている。消費者主権時代のクリエイションはそうあるべきなのだろう。

※KFMでは4月11日(木)「バイヤー/MD/DB育成 マーチャンダイジング技術革新ゼミ」を開催します。

      
     
◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら