小島 健輔
かりそめの宴の実態は・・・・
今秋冬のアパレル販売は冷え込みにも恵まれて回復基調で、出遅れた婦人服も11月には浮上し、12月も中旬までの数字を見る限りは婦人服も紳士服も堅調を保っている。とは言え、内情を知れば本当に回復しているのか?と疑いたくなる。
1)百貨店の売上回復はインバウンド特需による押し上げが大きい。10月は全国百貨店売上の6%を占め、銀座両店平均は30%に達して難波・梅田の主要店でも15%に迫る一方、国内売上は10月は4.7%のマイナス、11月でも0.2%のプラスに過ぎない。大都市百貨店とインバウンドの恩恵の限られる地方都市百貨店の前年比格差は10月で6.8ポイント、11月でも5.6ポイントも開いている。
2)インバウンドや株高もあって売れているのは化粧品や宝飾品、衣料品も高額ブランドばかりで、百貨店の平場や駅ビル/SCは機能性ブランドなど一部を除いて低迷を継続しており、衣料消費は極端に二極化している。
3)回復基調と言われながらもアパレルの過剰供給は解消されておらず、ECでの先行セールにも煽られて早いところでは11月末からシークレットセールやファミリーセールが始まっており、年明けのクリアランスを待つまでもなく既にバーゲン状態に突入している。その数字も含めての“回復”だから割り引いて見る必要があろう。
4)アパレルチェーンでは店舗売上とECの伸び率は25ポイント近く開いているが、大手アパレルでも店舗売上が低迷する中もECは毎月30〜60%も伸びており、その格差はアパレルチェーンの比ではない。EC比率も先行する中堅アパレルでは30%を超えるケースもあり、大手アパレルでも急速に上昇して10%に迫っている。公表される売上前年比はそんなECも含めての数字である事は言うまでもない。
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こうして見ると、アパレル販売の回復も相当に怪しいものだと解る。高額ブランドはともかく、大部分の中低価格ブランドについては先行セールやECで嵩上げた売上であり、店頭販売の実勢は冷え込んだままだ。セール前倒しも実需期より先行するに及べばプロパー需要を先食いしてしまい、なりふり構わぬEC拡大は店舗売上を食って店舗を負の資産に転落させてしまう。そうなれば遠からず財務的に行き詰まってしまう。もはやアパレルギョーカイは正価販売も店舗販売も見切っているのではないか。
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