小島 健輔
ECは儲からないビジネスになった
破竹の勢いで伸びて来たアパレルECだが、ZOZOSUITとPBの大失策にZOZOARIGATOを契機としたZOZO離れまで加わってZOZOの業績が暗転するに及んで、様々なほころびが見えて来た。
ZOZOにしても一連の大失策に隠れて収益構造の劣化が進んでおり、「終戦処理」が終わっても収益性は回復しないと見る。それはミニZOZOを標榜して急成長して来たSHOPLISTの赤字転落を見ても明らかで、ECの収益構造は急激に悪化している。
その最大要因は17年10月のヤマト運輸に始まって同11月の佐川急便、18年3月の日本郵便と続いた宅配料金の一斉値上げと倉庫運営人件費の高騰にあることは明らかで、SHOPLISTなど物流費のコストアップ分(売上対比4.2%)だけで営業利益(前期の売上対比4.0%)の全額が吹っ飛んで19年3月期は3億3500万円の営業赤字に転落している。
SHOPLISTの物流単価(宅配外注費+倉庫運営費)は一期で552円から797円に245円も急騰し、ZOZOの荷造運賃単価(宅配外注費)も二期で390円から570円に180円も上昇している。
店舗販売より格段に低コストで便利だとして急成長して来たECだが、宅配料金の大幅値上げや倉庫運営人件費の高騰に加え、ポイントやアフィリエイトの負担、様々な新サービスが広がる決済手数料やAI導入費用などが重なって際限なくコストが肥大している。有力ECプラットフォーマーとてコストの高騰に耐えきれず、次々と手数料を引き上げているではないか。FBA(アマゾン)さえ逆ザヤが危ぶまれる中、一部手数料を無料化してのFBZ(ZOZO)など狂気の沙汰だと指摘したのも当然なのだ。
EC事業者の採算は刻々と悪化し、出品者や顧客にコストを転嫁したりサービスを切り詰めて利便を損なっている。このままでは、B2B物流を活用して宅配外注費を格段に圧縮し、店舗在庫を引き当てて在庫効率を高め顧客へのお渡しを速め、EC客をオムニコマース客に転換して売上を伸ばすC&Cを進める店舗小売業者との優劣が逆転するのは避けられない。
追い詰められるEC事業者の突破口は店舗小売業者のC&Cに対抗する「TBPP」とフルフィルコストを抜本的に圧縮する「スルー物流」であり、突き詰めれば受注と決済に徹する「ドロップシッピング」ということになるのではないか。
C&CとTBPP、スルー物流の具体的な仕組みについては6月19日(水)に開催する『攻守逆転の決定打 C&C戦略ゼミ』で詳説したい。