小島 健輔
ECモールランキング2019に見る ZOZO/アマゾン/楽天の勢力変化
当社で毎年3月に集計しているSPACメンバー企業によるECモール評価ランキングが今年もまとまったが、14年の集計開始以来首位を保つZOZOの人気急落で評価が分散し、2位以下が大変動する結果となった。
ゾゾタウンは首位を守ったものの全項目が前年から評価を下げ、低価格テナントが増えたせいか「ファッション感度」が前年から半減。「集客力」こそ首位を守ったが、「売上伸び率」は楽天ブランドアベニューに抜かれて2位に落ちた。「物流機能」は首位を守ったがアマゾンに僅差で迫られ、「ささげサービス」はベスト10にも入らず、「売上対比手数料負担率」は二年連続して最低評価に甘んじた。
総合2位は前年の5位から急躍進した楽天ブランドアベニューで、「売上伸び率」でゾゾタンを抜いて首位に立ち、「集客力」「ささげサービス」でも二位に着けている。人気がそちらに流れたせいか、楽天市場の方は6位から8位に落ちている。
総合3位は前年と同じくアマゾンで15年の16位から着々と上昇して来たが17年以降は3位で足踏んでおり、今回は楽天ブランドアベニューに抜かれた。2位に評価された「物流機能」を除けば突出した項目がなく、「集客力」で3位、「売上伸び率」で4位に評価されるに止まる。
4位は前年と同じくNTT系のマガシーク、5位はマルイウェブチャネル(前年2位)、6位もデベ系(百貨店)のタカシマヤファッションスクエア、7位はフラッシュセール総合モールのグラッド、8位は総合モールの楽天市場で、前年から一つ落ちたが15年の17位、16年の12位、17年の9位からは着々とアップしている。9位は17年末スタートの&モール(三井不動産)で、前年12位に登場して今回は3ランクアップしている。10位はマガシークと提携したロコンドで、前年の13位から3ランクアップしている。
ZOZO人気が翳る中、ブランドの顔が見えにくい「出品」型ゆえ敵失を活かせないアマゾン、楽天経済圏を背景に急伸する楽天ブランドアベニューという明暗が注目される。どこのモールもテンプレートは大差ないからブランドの顔が作れる編集フレーミングが問われるが、この点では楽天ブランドアベニューもZOZOに至らない。
とは言っても楽天経済圏は群を抜いている。国内B2C流通総額は楽天が前期比11.2%増の3兆4310億円(18年12月期)と、アマゾンの2兆5000億円(18年12月期の当社推計値)、ヤフーの1兆8000億円(18年3月期/ヤフオク、アスクルを含む)を引き離し、流通総額決済の59.4%を占める楽天カード、楽天Edy、楽天ポイントなど決済とビッグデータで囲い込む経済圏は楽天ペイを加えてモバイルシフトを加速している。経済圏戦略ではアマゾンもZOZOも遠く引き離されており、とりわけZOZOの戦略的視野の狭さが痛感される。