小島 健輔

2018 12 Nov

販売員は“売り子”なの?

 

 このギョーカイではロープレコンテストが花盛りで『アパレル販売員の教科書』的なテキストやブログも溢れているが、いずれも『販売員は接客販売をする職業』と決めつけている。昔風に言えば“売り子”という認識だが、それはギョーカイの空気が作り出した「建前の幻想」であって現実は違う。

 いかなる職業も労働の報酬を得る以上は「生産性」や「利益貢献」が問われるはずで、「販売」だけが販売員の報酬をもたらしているのではない。販売員の業務を労働時間で見れば、1)品出し・陳列演出・陳列整理・在庫管理などのマテハンあるいはVMD業務[付加価値マテハン業務と位置付けられる]が半分前後を占め、2)レジ打ちや包装など精算業務が続き、3)接客販売業務は量販的な店では数%に過ぎず、対面販売の店でもせいぜい20%程度にとどまる。残る20%前後は「待機」といえば格好がつくが実態は「店番」だ(少人数運営の店舗ではシフト組みに限界がある)。

 そのうち利益に直結する付加価値業務は売上を作る「接客販売」や「SNS投稿」、欠品を防止し鮮度を管理する「フェイシング管理」や消化を進めて値引きロスを減らす「編集演出陳列」の二業務で、ほかの業務は業務手順や情報装備をカイゼンして圧縮することが好ましいが、目の前の業務を処理することに追われて関心が及ばない会社が多い。

 品出し陳列ひとつ取っても、DCでカセット別に揃えて棚割り指示ビジュアルを添付し、定められた曜日の開店前に集約して投入すれば店舗の作業は半減する(外資系では専門アルバイト活用や外注も多い)。精算や棚卸しにしてもRFIDタグを装備すれば何分の一かの時間で済んでしまうし、最新のリアルタイム棚卸しシステムを装備すれば手間取るフェイシング管理や欠品探しも楽々こなせる。一番手間取る畳み直しや棚戻しなど陳列整理作業は「出前+元番地」陳列から「出前+オープンストック」陳列に変えれば半減できるし、EC発注のショールームストアにすれば試着品戻しだけで済むようになる。

 価値を生まない作業を圧縮すれば、売上に直結する「接客販売」や「SNS投稿」、消化を促進する「編集演出陳列」の時間を作ることができる。販売員の待遇を改善するには「価値を生まない作業」を圧縮して「価値を生む作業」に集中出来るようにするのが最も確実だ。販売員の属人的「接客スキル」や「おもてなし」を競うより“会社”がやるべきことが山ほどあるのではないか。