マサ 佐藤
事前シミュレーションをして働きやすい環境を
アパレル小売業もショップが複数店舗展開ともなると、物流倉庫が必要になってきます。
そもそも、私がこの業界に身を投じたのも、物流倉庫のアルバイトからでした。
★店頭と物流倉庫の在庫比率は??
ここで読者の皆さんにお尋ねしますが?皆さんは、自身のショップの店頭と倉庫の、初回配分(新入荷商品の初回振り分け数)の在庫比率をご存知でしょうか?当然、商品に携わるMD・バイヤーはこの情報を知ってほしいところです。
簡単に言うと、店頭が90%。物流倉庫が10%だと、売れたものは、倉庫からの商品補充が来なくなり、売れている商品はすぐに品切れするということです。こういったショップは投入item数が多く、1商品の販売期間が短いと推測されます。もしくは、店頭での売り逃がしが怖いため、必要以上の商品数を店頭に投入していることになります。
(ショップのスタイルによっては、100%:0%でもよいショップはある。しかし、そのことを実現するには、緻密な事前シミュレーションと組織の成熟が必要。)
当然、理想値は各ブランド・ショップによって相対的に変わるものですから、この数値の適性をMD・バイヤーは考えておかなければなりません。
★店のバックヤードは、店頭展開商品よりも多く収納できなければならない?
また上記のこととは別に、以下のようなことも把握しておかねばなりません。
→今日売れた商品が、明日本部にデータに上がり、明後日店頭に到着する。(基本毎日デリバリーがある。)店だと、初回商品配分は基本売上2日分の初回配分が必要だということです。1日2枚の売上が推測されれば、初回商品配分数は4枚になります。1日1枚ならば、2枚。
すべての商品が日々売れるわけではありませんし、毎日商品入荷があるという現状を考えれば、凡そ2日分?の売上数量(売上原価分)の在庫がバックヤードに収納できれば良いのですが、現実は、売り逃しが怖く店頭に商品を振り切ってしまうようなケース。また、各商品。各SKUの売上予測が難しい現状を考えれば、店頭展開商品以上のバックヤードの収納数が必要になってきます。
そして、上記2つのことを事前シミュレーションしていないと以下のようなことが起こります。
・店頭が商品で溢れる。バックヤードにも逃がしきれないため、現場スタッフの作業負担が増える。
・一度、満足に作ったVMD(レイアウト)も次の日壊れる。毎日その作業の繰り返し。
・店舗間移動の作業量の増加。それに伴う物流費の増大等
現場スタッフの疲弊を招くだけではなく、販管費の観点から見ても効率の悪いことが増大します。
ショップ・ブランドとしての適正投入アイテム数の算出。また店頭:倉庫の初回配分比率。使い勝手の良い店舗のバックヤードの設計等を全く考えない。等の事前シミュレーションをしないと上記の例ような弊害が多々でるということです。
★テクノロジーの活用を考える前にすべきことがある。
昨今、ECやAI等テクノロジーを活用が盛んに喧伝させれています。私自身もそのことに異論はありません。しかしながら、算数を使って、事前シミュレーションも行わず、見た目だけ派手な店を出し、店頭スタッフ等の実務者の視点・使い勝手などまるで考えていない!そのような運営を行っている、ブランド・ショップにテクノロジーを活用するなど、できるでしょうか??
それは空想でしかないでしょう。まずは、「今できる身近なことから、算数を利用し、実務者の働きやすさを最優先に考える」そんな姿勢こそ、この業界に求められることではないでしょうか??