久保 雅裕

2018 23 Jul

真の経営者の矜持

百貨店の苦境に呼応するかのように大手アパレルの希望退職が増え始めたのが2015年から。希望だ、早期だと言葉面を飾ってみても人員整理・合理化の本質に変わりはない。13年に三陽商会が270人、15年にTSIが528人、ワールド(事業会社は現在分割されている)が498人、16年には三陽商会が再び249人、少し前のことになるが08年にはレナウンが400人と発表していた。これだけでトータル2000人近くになる。これにニュースにならない中小を加えると大変な数になるだろう。百貨店で象徴的だったのは昨年の三越伊勢丹による「3年間で800~1200人、早期退職者5000万円退職金上乗せ」のニュース。18年3月期の結果は180人だったそうで、5000万円上乗せでも希望しない人がたくさん居るんだな~と感心したものだ。

さて、シュリンクするこの既存流通に対して、ECのみのブランドや小売企業の台頭が目立つ。家賃などの固定費を抑え、少ない本部人員、中間マージンの削減による高い利益率により、効率の良い企業体質を作り上げている。理論上は間違いなく、合理的な選択肢だが、いかに消費者にリーチし、知名度や露出を上げていくのか、実店舗の接客に勝る顧客感動をどう作るかなど、相当な工夫とアイデアが必要だ。ITやSNSを駆使して、その辺りの課題を軽々とクリアしていくのだから、正直、柔軟な頭を持つ若者には敵わない(^-^;。

先日、もう20年以上の付き合いになる中堅アパレルの社長と話していて、アパレル企業のリストラによる利益確保の話題になった。彼は「人員整理をして、利益を出すのは簡単なことですよ。そんなやり方は誰にでもできる。」と寂しそうに呟いた。その会社は創業45年で、売上高は数十億円。「来る者拒まず、去る者追わず」の自然体でやってきたように筆者には見えていた。結果、社員の平均年齢はかなり高くなっている。だが、定年後も希望者は働き続けていて、かつ首切りもしない。どうやら、かなり居心地の良い会社らしい。

「人員整理しなければ、蹉跌が待っており、全社員共倒れだ」との反論もあろうが、「株主利益優先」の本音を隠せるものではない。先の中堅アパレルの社長の言葉に、真の経営者の矜持を感じるのは私だけではないだろう。