久保 雅裕

2018 01 Jan

「存在が意識を規定する」(後編)~森永邦彦デザイナー、マッシュホールディングス近藤広幸社長、ビームス青野賢一クリエイティブディレクターの場合

さて全編に続き、4回目の「アンリアレイジ」森永邦彦デザイナーの場合は結構はっきりしている。それは母親が文化女子大学卒で、「小さい頃は洋服を作ってくれ、祖母も家で洋服のお直しをやっており、家にはずっとミシンがあって、いろんな方が洋服を持ってきて直していたり、母が縫っているのを見ていたりという環境はありましたけど。でも、興味は全然、そこには向いてなかったですけど」と語っていた。興味は向いてなくとも知らずに影響されているものなのだ。

5回目のゲスト、マッシュホールディングスの近藤広幸社長は、親の影響というより、少年時代の環境に影響されているようだ。「少年時代といえば、本当に一般的な子どもで、特徴も至って無くですね。ただ小学校3年生ぐらいの時に、習い事のところで出会った年上の方に洋楽、特にその方が聴いてたDuran Duran、Pet Shop Boysだとか、そういったところで影響を受けて、小学校3年から当時の『ベストヒットUSA』という番組を毎週観るようになり、そこからもうお小遣いは全部音楽というような小学生生活になりました」と語っている。かなりおませな少年だったようだ。この後ヘビメタへと進んでいくのだが、音楽の特異性は、そのまま天邪鬼な発想を生み出し、結果CGでもファッションでも差別化されたビジネスの方向性を手に入れていくようになる。

そして6回目(1月12日から放送予定)はビームス創造研究所の青野賢一クリエイティブディレクター。彼も母親が洋服のパタンナーの仕事をやっていたそうだ。「母は中学から短大まで目白の川村に行き、卒後、文化と桑沢のダブルスクールで、それをやりながらどこかのブティックで販売のアルバイトをやっていたらしいんですよ。その後フリーのパタンナーで当時、デザイナーズブランドのサンプルを作る仕事を家でやっていたんです。そんなのもあって、服はすごい身近にありました」と述べている。一方でイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)に影響されて音楽に能動的にのめり込んでいったそうだ。現在DJとしても活躍する彼のバックボーンが垣間見える気がする。

さて、筆者も親の影響を受けていることは間違いなさそうだ。母は自宅で手横の編み機を使い、内職で「ハナエモリ」のニットを編んでいた。父は印刷会社の技能士で、色校正の際に使うルーペは父親から譲ってもらった物だ。

親の背中を眺め、幼少期あるいは少年時代にどんな経験をしてきたかが、人生の選択に少なからず影響を及ぼしていることは間違いないが、それ以上に考え方や思考、判断の基準などに独自の感性や視点を持つに到るには、またまた根っこを深堀りしてみないことには解明できない。そんな探究心を持ちながら、番組を続けていきたいと新年に思うところなのであ~る。