武田 尚子

2018 06 Feb

インナーへの新しいアプローチ「CASUCA」

今回の「パリ国際ランジェリー展」に日本からの初出展で注目されたのが、高感度ブランドを集めたEXPOSEDエリアにセレクトされていた「アロマティック・カスカ」。スタイリスト、衣裳デザイナーとして長年活躍する安野ともこさんによるランジェリーブランドで、既に熱烈なファンを持つジュエリーに次ぐ分野として2016年にスタートした。

 

ブランド名「CASUCA」は、もともと「微かなジュエリー」の意味を込めたもので、そのジュエリーは「可憐なのにクール、密やかなのに印象的」という通り、一見シンプルでありながらカット加工技術を駆使した繊細なモチーフが魅力となっている。「子供時代に自分の大切な宝物をあばら家に集めて隠し持っている『隠しごっこ』の感じ」(安野ともこさん)という表現がぴったりくる。

 

ランジェリーとのかかわりは今に始まったことではなく、スタイリストを始めて間もなく、百貨店のオリジナルブランドのデザインを手がけたこともあったという。今回の「アロマティック・カスカ」については、奈良で1930年創業の肌着メーカー、タカギとの出会いによって実現した。イタリアの超長綿、フィロスコッチア糸を使い、国内で一点一点丁寧に縫製されている。

 

テレビや映画、広告撮影などのスタイリングの仕事を通して、インナーの大切さを痛感してきた安野さんのアイデアが、その物作りには詰まっているわけだが、核アイテムとなっているのが機能性に富んだブラキャミだ。

天然素材のブラキャミというだけではなく、実際に着用してみると、既存とは異なる着用感が新鮮に感じられる。外には見えず肌にも当たらないシークレットアジャスターストラップをはじめ、胸元中央がふんわり浮いたようなシェルフロント、どんなバストもゆったり包み込むようなワイヤーフォーム、裾のフラットなボンディング加工と、端々に至るまでスタイリストである安野さんの息遣いが聞こえるような作りとなっている。フリーカットのボンディングショーツと上下で着用できる。

 

単にアウターにひびかないというだけではなく、まさにアウターの一部ともいえるランジェリーが登場したといっていい。

ウエアリングやレイヤードという発想が求められているランジェリーの、象徴的な存在となっている。