小島 健輔

2018 05 Jan

初夢じゃなく正夢になる流通革命

 去年はECが席巻したが、今年は店舗販売を駆逐してしまうかも・・・・ほぼ一世紀に渡って流通の主役だった店舗販売が百年ぶりにECという通信販売に主役の座を奪われ、脇役に追いやられていく。
 19世紀まで日常消費は棒手振りなど訪問販売が主流だったし、19世紀末から1910年代は日米欧ともカタログ通販の全盛期で、店舗販売が主流となったのは鉄道や乗用車が普及してチェーンストアが急成長した1920年代以降の“近代”の事。鉄道や乗用車という化石燃料依存の物理的移動手段が店舗販売の時代を築いたとしたら、電子情報ネットワークという非物理的通信手段がECの時代を築き店舗販売に取って代わるのは必然の理に見える。
 そもそも“物理的移動手段”とは消費者側が店舗に出向き棚から欲しい商品をピッキングし持ち帰るという物流労働を負担する購入方法(セルフサービス)で、売る側が物流労働を負担する訪問販売や通信販売に較べて消費者の利便が高いとは言えない。それでも嬉々として物流労働を負担してきたのは、情報が限られ店頭で現物を確認するしかなかったという“特殊事情”(情報の非対称性)が指摘されるべきだろう。それがSNSやECフロントの加速度的な進化によって店頭に優る情報と決済利便が提供されるに至り(出荷〜受取のバックヤード進化はまだ途上だが)、店舗販売の優位が崩れ去ったのだから雪崩的に主役交代が進んでも致し方あるまい。
 物品販売総体のEC比率は17年でも6%前後に過ぎず、衣料・服飾品で12%台、EC化が先行した書籍・AVソフトや家電・AV機器・PC、事務用品・文具でも25〜35%程度と推察されるからシェアが逆転した訳ではないが、EC比率が二桁に乗った分野ではECが流通の主導権、とりわけ価格決定権を握ってしまう。一部の優越的館が仕掛けたセール時期後倒しが脆くも崩れ去った一因としてECでのセール先行が挙げられる。
 店舗販売はECに較べてイニシャルコストもランニングコストも格段に高く、多店舗展開では在庫の偏在ロスも大きく、販売効率の水位が低下すれば容易に赤字転落してしまう。前世紀までのような普通借家契約ならともかく、今日の大半を占める定期借家契約では営業損益が赤転すれば店舗は資産から負債に転じてしまう。今のペースでECが拡大すれば多店舗展開のテナントチェーンは大半が破綻に瀕する事になるが、それを解ってEC拡大に走っているのだろうか。
 もはや消費の主役はECに移り、店舗販売は脇役として存続を図る局面に転じようとしている。私が提案してきたECと連携して販売と物流を分離する三段階のショールーム販売は店舗販売存続の決定打であり、店舗小売業は大なり小なり取り入れざるを得ない。店舗からはレジもストック室も消え、タッチパネル・チェックインが定着して物流作業員としての販売員も消えていくだろう。
 そんな“近未来”は今年後半か来年には現実になり、TOKYOオリンピックまでには一巡してしまう。そんな“近未来”店舗ではロープレ・コンテストで競われるような接客術は意味を失い、本部ではDBという職種も消えていく。商業施設にはショールームストアが並び、ECモール業者や宅配業者のTBPPも必ず入る。自社ECモール/リアルモール同一歩合一括課金体制を確立できない中小のデベでは売上歩合家賃という制度も遠からず消えていくのだろう。
 これを“初夢”と聞き流してしまうか明日にも迫る“正夢”と認識するか、経営陣のリテラシーが問われる“革命”の年になりそうだ。2月2日に開催するSPACニューイヤーコンベンションに参加されれば“正夢”のリアリティも一層高まるのではないか。
 

     
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