上野 君子

2021 14 Jun

最近気になるミーイズムと自己診断

この8年ほど、書店の仕事にかかわっているのだが、最近気になる変化がある。
「この本の新しいものはありませんか?」という質問が増えているのだ。
ご存じの通り、本というのは、売れている本や新刊が平積みされている以外は、本棚に1冊さしてあるのが通常だが、その1冊の「新しいもの」が欲しいというわけ。
本は購入する前にパラパラ見るのが当たり前だし、最近はカフェで自由に読めるなんていう書店もあるし、たいていはもう何人かが既にその本を見ているわけで、本というのはそれなりの貫禄が出てくる。
それは当たり前だと思うが、コロナのせいなのか、誰も触れていないまっさらな新しいものが欲しいという欲求が強くなり、ほんの少し角がよれていても買いたくないという人がいる。
一方で、書店を図書館替わりにして全く購入する意志がないという人も少なくない。さらにはコーヒーのシミをつけてもおかまいなしという輩も。
棚に差している本がすべて試し読み用の「見本」であるならば、本のビジネスというのはまったく成り立つわけがない。

これとはまたちょっと違う話なのだが、あるメーカーの展示会で、最近、自分で着るものを選ぶことができない人が増えているというのを聞いた。
昨今なぜか流行っている骨格診断、自己診断の影響か、自分の骨格のタイプを言って似合うものを聞いてくるお客が増えたのだという。
何でもカテゴリー分けが大好きな日本人。そのうちに、「私は獅子座だけど、似合うものありませんか」という質問が出るようになったりして。
そんなことやっていると、AIに乗っ取られてしまいますよ。