上野 君子

2019 23 Jan

ダウンコートは定着しているが

パリという所は、古くからモードの発信拠点らしく、ここほどトレンド(流行)が分かりやすく表われるところもない。

長年、半年ごとに来ていると、街を歩く人を見ているだけで、一般的な流行の変化がおもしろいように分かる。

 

特に冬のコート。私が最初に来た頃、30年以上前は、毛皮のコートを着ているマダムがまだ目立っていたが、その後、フェイクファーが登場。これは今のエコファーと違って、かなり重厚感があり、私もその昔買ったものの処分の仕様がなく、押し入れの奥で幅をとっている。

ウールのコートも毎年トレンドが変わり、ここ10数来は圧倒的にダウンを着ている人が多数派になった。女性も男性も子供も、主流はダウンコートだ。

そのダウンコートにも毎年トレンドが変化していて、昨年位からアウトドアスポーツ風の、フードにファーの付いたものを着ている人が増えた。

コートはとにかく軽く、スポーティになってきているのだ。

 

私もこれまで何点かダウンコートを経験してきたが、極寒にも耐えられる暖かいものが欲しいと思っていた。光沢のあるものや縫い目が段々にもっこりしたものは避けて、マットな生地のスポーティなものを探していた。

そこで今回、出張初日に購入したのは、しっかりした機能素材と中に上質なカナダグースの入ったカナダブランド。マグネット開閉など細部までモダンな機能性に満ちている。取り外し可能なフードのコヨーテファーはちょっと安っぽいし、毛が抜けるのが難点だが、ダウンとしては珍しい、私好みのPコートスタイルで、1200ユーロが半額位になっていたのも決め手になった(それでもかなりの出費だが)。フードを外せば、あまりスポーティすぎなく見えるところもいい(ベルト付き)。さらに目立ったブランドロゴやマークがないのも私向き。

 

確かに暖かさが違う。さすがに寒い国の製品だ。昨日、雪が降った寒いパリでは重宝した。

ただ、問題は重量があって、着るのにけっこうエネルギーがいるのだ。着ていて肩がこるまではいかないが、手に長い間持っていると疲れてしまう。

日本では冬に何度かしか出番がないかもしれない。

一言にダウンコートといっても実に多様。1枚でオールマイティにいかないところが問題だ。

10年着ているダウンの方も捨てられない(スーツケースに押し込んでもって帰れる軽さ)。

 

そういえば、街行く人々の足元については、近年流行ったムートンブーツは下火になり、今年はスニーカーからロングブーツまで多様性がある。

というよりは、今年の新しいものを買わず、昨年までのものを着用している人が多いのだろう。

パリの人々も皆、質素になったということなのかもしれない。