久保 雅裕

2019 19 Sep

記者会見はコミュニケーションの場だ!!

楽天ファッションウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)の記者会見が9月17、18の両日に渡って開催された。17日は楽天主催で東急セルリアンタワーにて開催されたのだが、その後のレセプションパーティーも豪華なもので、菅原一秀経産相、小池百合子東京都知事も出席した。楽天の三木谷浩史会長兼社長は、会見で「楽天ブランドアベニュー」のUI、UXを一新し、「楽天ファッション」とすることや、「ファッションの取扱高を現状の6000億から1兆円を目指す」と意気込みを述べ、「世界から評価される日本のファッションやデザイナーを支援する」ことの意義も強調した。さらに一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)の三宅正彦理事長は、「B2Cへの移行を進め、今の時代に相応しいウィークにする」と述べた。この点については後述する。

さて、この種の会見は大体30分程度で説明と質疑応答が組まれており、先週同所で行われた東急プラザ渋谷の記者会見も同じような感じだ。そして質疑応答も時間内で打ち切られる。もともとあまり質問の無い日本では、この程度の時間で済むのだが、吉本興業のようなバラエティー番組ネタの会見になると、俄然マスコミもやる気を出すようだ。

翻って繊研新聞パリ支局長時代に、とあるファッション見本市の記者会見に出向いた際に、各国記者たちが結構しつこく質問し、それに答える主催者の姿が印象的だったことを思い出す。海外では、質問は大いに公の場で行い、情報を広く公開させるというマスコミ側の連帯意識を感じたものだが、日本だと会見後にいちいち個別に聞いている記者が多く見られ、それは「独自のネタを聞き出したい」との思いからなのだろうが、どうも自己中心的な感は否めない。

さて、翌18日の午前にはJFWO主催の記者会見が文化ファッションインキュベーションで開かれた。この場でも三宅理事長は「一般消費者への認知向上を進め、根本を変える」と前夜同様のB2Cへのシフトを匂わせる発言を行った。筆者はこの発言に対して、「世界のファッションウィークは、B2Bの発注時期に合わせて開催されているが、東京は、シーナウバイナウなど店頭の立ち上がり期に会期を移すという選択もあるのか?」と質問した。この点に関して三宅氏は「オリンピックなどもあり、時期を急に変えることはできないが、楽天の力を借りながら今までとは違うB2Cの要素を付加していくというものだ。ただし、あくまでもB2Bの基本スタンスは変えない」と答えた。また太田伸之理事は「今回、冠スポンサーが日本の会社になったことは大きい。こちらからの提案に対して、本社にお伺いを立てて時間がかかるという事がなく、すぐに決まる。デザイナーにとっては10月では遅すぎるとの声は聞いており、世界基準でビジネスができる一番良い方法を考えたい」とも述べた。

こうした一連のやり取りで、真意が見えてくるのが記者会見の醍醐味だが、一方通行で、当事者にとって都合の良い情報開示のみのプロモーションを押し付けるような体が増えてきている気がするのは、私だけではなかろう。自省も込めてだが、あとでグチグチ言うより、その場で切り込むくらいの気概を持ち続けねばと思った次第である。