久保 雅裕

2020 05 Apr

今夏だけベルリンかコペンをファッションキャピタルに??

4月3日に届いたピッティ・イマジネ社からのコミュニケ

コロナショックが蔓延する中、先週末、ピッティ・イマージネ社から「ピッティ・ウオモ」「ピッティ・ビンボ」延期の告知が届いた。これで、既に中止が決まっていた2021年春夏メンズコレクションサーキットに続き、同じく先週中止を決定したパリの連盟とトレードショーのコミュニケを含めて、6月の主要なメンズファッションウィークカレンダーが軒並み中止という事になった。

では、果たしてパリのショールームはマレ地区を中心に行われるのか? その答えはNonだろう。フランス婦人プレタポルテ連盟、仏メンズ服飾産業連盟、ニット・ランジェリー・スイムウェア連盟の3団体と「トラノイ」「マン」やリゾート・スイムウェアの「スプラッシュ」を含む6つのトレードショーが中止を公にした事により、個展やショールームも中止せざるを得ない環境となってしまったようだ。さらにメンズコレを目指してやってくるバイヤーも期待できない。既に9月のウィメンズセールス時期に、メンズも併せて行う計画をしているショールームもあるようだ。

ウィメンズより3ヶ月早いメンズは、12~1月納期を守ろうとすれば、遅くとも7~8月中にはオーダーを締めなければならない。9~10月締め切りという選択肢は、「納期遅れ」という致命傷を負うと考えるブランドも多いだろう。一方で、2~3月納期にずれ込んでも、このような状況下では仕方ないし、小売や流通、消費者も、それを特例的に受け入れてくれるだろうという見方を示す大手ブランドもある。また本来の「適時」という観点から、これからはもっと納期を後ろ倒しにすべきという意見も出てきている。業界全体を考えるなら、それも一考の価値はあるのだが、個別の企業の経営を考えるとそれだけ売掛金の回収時期が後ろにずれ込み、半期だとしても資金繰りに影響することは間違いない。

パリの団体とトレードショーの合同コミュニケ

そんな中、6月30日~7月2日のベルリン、7月19~21日のNY、22~23日のロンドン、そして8月5~7日のコペンハーゲンのトレードショーは、まだ中止を決めていない。特にベルリンとコペンハーゲンは毎年、ファッションウィークとしてセットアップされている。ドイツは医療体制が比較的安定しており、他国から重症者の受け入れを行う余裕もある点やデンマークのコペンハーゲンは、8月開催までまだ少し期間があるため、様子見の状態にあるのかもしれない。もし、この2都市のファッションウィーク開催が可能だとするならば、今年に限っての話になるが、21年春夏メンズの受注会をベルリンかコペンハーゲンで行うという選択肢もアリなのではなかろうか。「プレミアム」や「シーク」などのベルリンか「CIFF」のコペンハーゲンのどちらかに世界のメンズバイヤーを集客させるキャンペーンを世界のトレードショーと業界関係者が行ってみてはどうだろう。時期的には、ギリギリ納期遅れを発生させない手立てとなるのではなかろうか。もちろん、世界的に見て需要が相当量失われる予測もあり、発注量の減少は避けられないだろうが、「やらないよりはマシ」と思うのだが。ギャラリーやホテルなどのキャパシティーの問題もあるが、まずは決めて取り組むことが肝要だろう。

一方、今回のコロナ禍で加速されるだろうデジタルの取り組みも忘れてはならない。ピッティ・イマージネ社は「従来のデジタルプラットフォーム“e-Pitti”とまったく異なり、高度にバージョンアップしたデジタルプラットフォームで、多岐にわたる商品紹介とトレードフェアに必要な独自のニーズに応えるために設計されている」「Pitti Connect」という「フィジカルなトレードフェアを補足するという機能以上のツール」をローンチする予定だそうだ。またパリの共同コミュニケに名を連ねている「VIEW(ビュー)」は、今年6月にカロー・ド・タンプルで初開催される予定だったトレードショーで、ベースにデジタルプラットフォームを備えた合同展という新しいコンセプトのものだという。

トレードショーもフィジカルとデジタルの両軸での発展が欠かせないという未来像も見えてきたと言える。