武田 尚子

2022 29 Sep

コロナ禍の中でも水着活況の理由

過酷だった夏もようやく終わりでホッとしているところ、来年の夏物の話題で恐縮だが、これについては早めに触れておかなくてはならないと思う。
2023春夏のコレクションを披露した「2022パリ国際ランジェリー展」では、“ホームリゾート”とでもいえる新しいコンセプトが浮上していた。それはスイムウエアやビーチウエアと、ルームウエアやラウンジウエアの両者が、今までになかった「接近」を見せていたのだ。

水着ブランドがラウンジウエアのようなスタイルを(Mellissa Odabash)

つまり水着ブランドが、家で着るようなラウンジウエアを提案していたり、ビーチウエアなのかルームウエアなのか区別がつかないようなスタイルが少なくなかったりということもあるが、それだけではない。
もともとヨーロッパでは多くのランジェリーブランドが水着を展開しているが、来年のコレクションに関しても非常に前向きなものを感じた。

その原因は、長年にわたってワコールヨーロッパでマーケティングを担当しているソフィさんの以下の話で納得いくものがあった。
ワコールヨーロッパ(「WACOAL」ブランドをはじめ合計5ブランドを展開)は昨年度、過去最大の売上を記録したが、カテゴリーとしてはスイムウエアの好調な伸びが貢献したという(「WACOAL」ブランド以外は水着を展開)。

快進撃を続けている「ELOMII(エロミ)」では、ふくよかな体型をより美しく見せる水着が人気(2023春夏コレクション)

この2年はコロナ禍の影響で、従来のように方々へヴァカンスにもあまり行かれない状況だったのでは?と思われるが、それに関しては想定外の応えがかえってきた。 
「フランスでは、家にプールやスパを作る人が急増して、プールの業者が儲かっていることが話題にもなりました。海外からフランス国内に、また遠くに出かけるのではなく家で過ごすというように、フランス人のヴァカンスの過ごし方が変化し、水着も身近なものになったのです」


ワコールヨーロッパのマーケティング&コミュニケーションマネージャー ソフィー・ニスさん

また、買い物の仕方としてはECが伸びたことも確かだが、同社の強みである接客販売も功を奏している。
コロナ禍で体型変化が気になる人が増え、ランジェリーもスイムウエアも、店でプロのアドバイスを受けて自分に合ったものを選びたいという要求がより高まったという。
こういったことを背景にしながら、2023春夏コレクションでは水着も非常に前向きな提案を行っている。

「2022パリ国際ランジェリー展」のファッションショーに登場した「Fleya(フレヤ)」(ワコールヨーロッパ)のスイムウエア(2023春夏コレクション)。幅広いサイズ展開が特長のブランドは、アニマルプリントが充実

新型コロナウイルスの影響によって、夏のライフスタイルも変化を見せている。
リゾート地に足を運んでヴァカンスを楽しむか、家でのリゾートを楽しむか。そのバランスは人それぞれだと思うが、“ホームリゾート”派の割合も確実に増えているのではないだろうか。
また、夏のヴァカンスに限らず、ホームウエアのカテゴリーそのものも変化の時を迎えているような気がする。

シャンテルグループのブースで開催されていたフロアショーでも、ホームウエアのようなビーチウエアが目についた(「シャンテル」ブランドをはじめとするシャンテルグループのブランドミックス)