進士 恵理子

2020 26 Feb

ベーグルの故郷

ホテルとデパートの間にうっかり見過ごしてしまいそうなほど小さな、そして親しみやすい感じのカフェがあった。入ると誰もいない。ニコニコした女性が奥から出て来て対応してくれる。何にする?といった感じで。ベーグルをベーグル屋でオーダーしたことのない私は、まずはベーグルをじっくり選びそれからトッピングを考えることにした。

 
 
店のおかみさん曰く、うちのベーグルは正統派なのよ。と自信たっぷりだ。そういえばドイツ人じゃないけど流暢なドイツ語を話すこの人はどんなルーツかあるのかしら。「ベーグルの発祥地ってどこなの?」と聞いてみた。
「みんなアメリカだって思ってるみたいだけど、東ヨーロッパのユダヤ人の食事スタイルなのよ」と教えてくれた。知らなかった!
ただ生地は焼く前に茹でるということだけしかベーグルについて知らなかった私はふんふんと耳を傾けた。バターも牛乳も使わないシンプルなベーグルは日持ちもするらしい。このカフェの横を奥に入っていくとユダヤ人コミュニティの集会所があってそのためにここで店をやっているという話もしてくれた。
 
 
いたってベーシックなスタイルでいただいたベーグルはしっかりした生地の美味しさとトッピング同士が生み出す美味しさに溢れていて大満足だった。
 
 
店内の照明や椅子のデザインや素材がどこか異国的な感じで新鮮かつ神秘的で、文化と食文化には一言では言い表せない包括的なメッセージがあるなぁとつくづく思いました。この女将さんの思い入れみたいなものを強く感じたからかな。日本人の私もよくドイツ人に興味深く色々聞かれたり、本人の日本感を語られたり、旅行がいかに素晴らしかったか語られたりするけれど(本当に突然で思いもかけない人、例えば病院で担当してくれたお医者さんとか)いかに文化の違いが人にとってかけがえのない経験であるかを感じます。こんな時代だからこそ直接人とお話しすることができる機会に恵まれたら知識だけでなく五感で感じるものを提供できることが大事なのでしょうね。