船橋 芳信

2020 23 Feb

30th Milano Unica Spring-Summer 2021生地展

30th Milano Unica Spring-Summer 2021生地展ミラノウニカが終わった。

今回の生地展では、特質されるのは、コロナウィルスに端を発する、中国市場への閉鎖状況である。
実際に閑散としたミラノウニカの会場には、東洋人のバイヤーは少なく、
危機感を持った生地メーカーのスタッフからは来シーズンの生地発注への不安が覗き見られた。
来シーズンの春夏には、シルク素材を中心に、綿シルク、麻シルクの混紡、
キュプラ綿、加えてストレッチ、カシミアシルク、等の生地を発注した。
我がアトリエには、昔からの在庫生地が沢山あって、80年代後半のブクレ素材、
を沢山使った秋冬コレクションを継続して、次の春夏コレクションは、
シルクを洗った風合いのウォシュドゥシルク素材サマーウールブクレダブルフェイス等
レトロ感のある生地展開を目論んでいる。
 
The Japan Observatory at Milano Unica 2021SS 日本の生地メーカー30社が参加した。
今年で12回目のミラノウニカ開催参加は、イタリア始め、世界中のデザイナーへの日本の物作り、生地のクオリティ、
表現行為への素材としての地位を、確実に進めているように思われる。
価値ある展示会である。さて無事に展示会が終わって、スタッフの方たちと恒例の食事会に行った。
ここ数回、気に入ったサルデーニア料理のレストランである。
ウニのパスタ、カラスミのパスタ、パスタは全て手打ちパスタ、歯応えの美味さとウニ、カラスミの
濃厚な舌触りに、皆感嘆のうなり小声で、感動する。
 ワインはヴェルメンティーノの白ワイン、アンティパストに白魚のコロッケ風のフライ、
香ばしい、パリッとしてワインと良く合う。
 パスタの後のデザートにトゥリリオという、ベラに似た魚のグリル、これも絶品だった。
デザートに入ったとき、最初に来た時に食べたセアダスについて、1人が、話し始めた。
 『あのデザート、始めて食べた時は、何コレ!って滅茶美味しかったよね。
セアダス食べたくて、2度目もこのレストランに決めたんだけど、2度目は、不味いとは言わないけど、
感動的ではなかったのに、少しがっかりしたよね。』
『でも、デザートはセアダス一個頼んでシェアーしようよ。』
さて2度目は感動しなかったセアダスとは、ペコリーノのチーズをパイ生地に包んで焼いて、
蜂蜜をかけて食べるサルデーニアの郷土料理である。
 始めて食べたこのセアダスは、少ししょっぱいペコリーノ山羊のチーズと蜂蜜のコンビネーションのデザートである。
我々日本人にとっては始めて食する味覚である。其の初対面での感動が、幾度もは持続しないと言う事を
味覚において体験させてくれたのか、話は物作りの同じ要素に滑って行った。
 感動した事を記憶は、脳は脚色する。味覚に置いても、味の記憶は状況、条件、が違うのに、心に脳は
一回目の感動を期待させる。味あう側としても同じ味には絶対に出逢えないのに、期待する分落胆してしまう。
 作る側から考えると売れたものを、再び同じデザインで繰り返す間違いに陥ってしまう。
感動は一瞬、一瞬、それだけで終わってしまう。繰り返しはあり得ない事だと云う、結論に達した。
 それでもセアダスは、高い感動の舞台から舞い降りて、我らのテーブルで、普通に美味しいデザートとして、
食後の会話を愉しませてくれた。